150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか 書評|瀧澤 美奈子( ベレ出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年11月1日 / 新聞掲載日:2019年11月1日(第3313号)

150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか 書評
科学黎明期の興奮を伝える名門科学誌の記事を読む本

150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか
著 者:瀧澤 美奈子
出版社: ベレ出版
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 NATURE(ネイチャー)は一八六九年にイギリスで創刊され現在も続いている科学雑誌だ。投稿された論文はそれぞれの専門分野の研究者による査読を経て掲載されるため信頼性が高い。今も科学者にとってネイチャーに論文が掲載されることは大きな実績となっている。

ネイチャーが創刊されてから、今年は一五〇年の節目。この間に科学は目覚しく進歩した。一五〇年前の科学を取り巻く状況はどうだったのか。日本で言えば、江戸から明治に変わってわずか一年。西欧に留学生を送り、急速に近代化をおし進めていた時代だ。

一八世紀から一九世紀にかけて英国を先駆けとした産業革命により工業技術が急速に発達した。そしてさらに二〇世紀に向けて物理学の研究が進み、電子・電気工学が急速に発達してゆく。

一九世紀の終わりには、「(古典)物理学は完成し最早やることがない」という声まで聞かれるほどだった。しかしその後、原子物理学・量子力学・相対性理論など物理学は新しい段階に入っていく。このような近現代の科学技術の大変革期の科学を巡る状況はどのようなものであったのか。

本書は、ネイチャーの創刊号及び初期の号の記事を引用しながら、当時の科学をめぐる状況を紹介している。

主な内容は、当時の科学論争(カッコウの卵の色、ダーウインの進化論など)、女性と科学の関わり、海洋観測船チャレンジャー号の成果、モースと大森貝塚、その他、ネイチャーに書かれた一五〇年前の日本の姿が紹介されている。

興味深いのは当時のネイチャーには、読者の投稿欄があり、ここで様々な議論が行われたということだ。投稿と言っても専門家によるものが多く、レベルの高い議論が行われていたようだ。まるで現在のSNSのようだと著者は指摘する。

また、当時のネイチャーに頻繁に登場する日本人として博物学者の南方熊楠があげられている。当時、熊楠はイギリスに留学しており、ネイチャーに何本もの論文を発表している。

著者も言っているが、当時のネイチャーの英語は、格式ばった古風なイギリス英語で訳すのに苦労したという。原文を読んでみると確かにわかりにくい。できることならネイチャーの誌面の写真を一部でもいいから掲載してほしかった。許諾の関係があったのかも知れないが、全ページ文字ばかりというのは若干とっつきにくい。もちろん読み進めるうちに、どんどん興味深い話に吸い込まれていってしまうので、平気と言えば平気だが。

続編の予定があるのなら、次はぜひ現代物理学へとつながっていく、科学史のなかで最もドラマチックな時代、一九〇〇年前後から一九三〇年頃までについて、ネイチャーを軸に書いていただけたならと思う。

本書を読んで思うのは、科学を巡る状況は基本的に今も昔も変わっていないということだ。基礎研究と応用研究ではどちらが大切か。科学者の役割は。研究費はどう配分すべきか。科学研究における女性の役割。こういった普遍のテーマが一五〇年も前から議論されていることに感動する。

いずれにしろ、大変面白く勉強になる本だと思う。科学を志す若者、科学に興味のある方は是非目を通しておくことをお勧めする。
この記事の中でご紹介した本
150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか/ ベレ出版
150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか
著 者:瀧澤 美奈子
出版社: ベレ出版
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