芦沢央著 カインは言わなかった|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年11月2日 / 新聞掲載日:2019年11月1日(第3313号)

芦沢央著
カインは言わなかった

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 芦沢央の十作目の単行本。芸術に魅入られ、限界まで美を追い求める表現者たちと、その周囲の声なき叫びを描いた本作は、冒頭から殺害シーンが展開し、不穏な雰囲気で始まる。

世界的芸術監督・誉田規一が率いるバレエ集団・HHカンパニーの新作公演は「カイン」――『旧約聖書』で人類初の殺人とされる「カインとアベルの物語」をモチーフとした演目である。その主役に抜擢された藤谷誠が、公演三日を前に姿を消した。誉田の異常ともいえる厳しい練習に耐え、恋人とも距離を起き、全てを舞台に捧げていた誠にいったい何があったのか。

主な視点人物は四人。一人目は誠が失踪した理由を追う恋人のあゆ子。二人目は誠の弟で、女性を惹きつける魅力を持つ画家・豪に振り回される有美。三人目は誉田の過酷な練習により、愛娘を失った父親の松浦。四人目は、誠が失踪したことで急遽、代役として主役に選ばれそうなダンサーの尾上。

登場人物の誰もが愛や才能、評価を切望し、追い詰められ、「狂気」を潜ませている。それぞれが冒頭の事件を起こす動機を持っているのだ。いくつもの激情を交錯させながら舞台「カイン」が幕を開け、事件の真相と、誠が消えた理由がゆっくり解き明かされていく。

芸術にすべてを懸けた者たちの、そして彼らに蔑ろにされてきた者たちの〝沈黙〟の正体は罪か罰か。最終章で明らかになる真実をどのように判断するかは、読み手の私たちに委ねられている。
この記事の中でご紹介した本
カインは言わなかった/ 文藝春秋
カインは言わなかった
著 者:芦沢 央
出版社: 文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「カインは言わなかった」出版社のホームページはこちら
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