障害社会学という視座 社会モデルから社会学的反省へ 書評|榊原 賢二郎(新曜社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年11月9日 / 新聞掲載日:2019年11月8日(第3314号)

障害社会学という視座 社会モデルから社会学的反省へ 書評
生きづらさ〟に対抗して
社会や文化を根底から作り直すことを志向

障害社会学という視座 社会モデルから社会学的反省へ
著 者:榊原 賢二郎
出版社:新曜社
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 障害が引き起こすさまざまな〝生きづらさ〟は、障害それ自体やそれをもつ個人に原因があるのではなく、支配的な社会や文化に原因がある。だからこそ障害をもつ多様な人々が生きやすくなるよう、社会の制度を変革したり、必要なサービスを充実させ、他方で狭い「思い込み」や「決めつけ」を解体し、障害者をめぐる新たな意味や文化を創造していく必要がある。障害学が提唱した「障害をめぐる社会モデル」は、著者の言うように障害者問題を考えるうえで、革新的な主張であり、今の世の中を考えてみても、広く深く社会モデルの発想や思想が浸透し、実現されているとは、まだまだ言えないまでも、私たちの日常的な考え方や見方に大きな影響を与え続けてきたことは確かだろう。

しかし著者は「障害をめぐる社会モデル」の意義を十分認めたうえで、モデル構成自体にはらまれる問題を明瞭に指摘する。それは障害が与える〝生きづらさ〟の原因を社会や文化に求め、その変革を志向するとき、そこには〝生きづらさ〟の当事者としての「障害者」が前提とされてしまい、その前提自体の検討や解読が十分にできなくなるのだ。またこのモデルが主に想定している障害のリアリティが限られており、より多様で深い障害をこのモデルのみで把握することは困難なのである。もちろん著者も明確に述べているが、障害学は単なる障害をめぐる学ではない。障害者に対する差別や排除、さまざまな〝生きづらさ〟に対抗し、異議申し立てをし、差別や排除を「あたりまえ」とする支配的な社会や文化を根底から作り直すことを志向する実践としての学なのだ。そのとき、社会や文化を変革する主体は必須であり、障害をもつ者自身の当事者性の確保は、障害学を進めるうえで重要な手続きと言えるだろう。

著者は「社会モデル」がもつ理論的・実践的な制約を乗り越える原動力として障害社会学を提唱する。ここでは支配的文化や社会へ対抗する主体としての障害者のありようもすべて「前提」ではなく、それ自体探求する価値がある「社会学的対象」となるのだ。また従来の障害者問題の枠ではとらえ切れていない「身体をめぐる生きづらさの体験」もまた解読の対象となる。

本書では、「女性で髪の毛がないこと」がどのような「障害」なのか、発達障害をどのように捉え直せるのか、何が知的障害者と親を離れがたくさせるのか、障害社会学の発想から考える障害者スポーツの可能性、ALSという難病で進行する障害と自己の肯定という問題、言語障害と相互行為儀礼から考える吃音という問題など、興味深い論考が収められている。編者の障害社会学をめぐる丁寧な理論的説明とあわせて充実した論集となっている。障害社会学が今後どのような展開をするか、期待したい。
この記事の中でご紹介した本
障害社会学という視座 社会モデルから社会学的反省へ/新曜社
障害社会学という視座 社会モデルから社会学的反省へ
著 者:榊原 賢二郎
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
「障害社会学という視座 社会モデルから社会学的反省へ」出版社のホームページはこちら
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