佐藤飛美インタビュー 「好き」を「もっと好き」にする参考書 「『ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、教授、授業の題材にしませんか?」(小鳥遊書房)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年11月15日 / 新聞掲載日:2019年11月15日(第3315号)

佐藤飛美インタビュー
「好き」を「もっと好き」にする参考書
「『ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、教授、授業の題材にしませんか?」(小鳥遊書房)刊行を機に

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日本語訳版が発売されてから二十年経ってなお、人気の衰えないJ・K・ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズ。
その物語を豊富な資料をまじえながら、徹底的に解説する『『ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、教授、授業の題材にしませんか?』(小鳥遊書房)が上梓された。刊行を機に、著者の佐藤飛美氏にお話を伺った。      
(編集部)

第1回
勉強は自由なもの/時間をかけて考える面白さ

佐藤 飛美氏
――執筆のきっかけからお聞かせいただけますか。
佐藤 
 二十歳頃からずっと、『ハリー・ポッター』に関する「本を出したい」と思っていました。本書は卒業論文が大本になっていますが、卒業後も個人的に研究を続けていたこともあって、類書は集めていたんですね。

他の方が書いている評論などを読んでいると、次第に、日本語力や文章表現といった点では劣るかもしれないけれど、着眼点であれば自分でも面白いことを見つけられるのではないか、せっかくなら一冊の本にまとめるところまでもっていきたい、そう思うようになりました。それが執筆のきっかけです。

――どうして『ハリー・ポッター』を研究対象に選んだのでしょうか。
佐藤 
 英語の道に進もうと決めたきっかけが『ハリー・ポッター』だったんです。中学生の頃、第五巻を読んで、母に「英語の道に進む」と宣言しました。大学では、留学の勉強のために原文で『ハリー・ポッター』を読み、さらにその世界に引き込まれていきました。いざ卒論の研究テーマを決めるとなったときには紆余曲折あったのですが、やっぱり初志貫徹しようと思い、そこから今に至ります。

――大学などの研究機関に所属せず、個人的に考察を深めていったのはなぜでしょうか。
佐藤 
 その選択が賢かったのかどうか、今でも考えることはあります。本を出して初めて分かったのですが、研究者としての肩書きがないので、自分は何者なんだと自問自答することもある。それでも、研究者ではない立場の視点で考察を深めていくことを選びました。そういう方々がどういう生活をし、何に心を動かされているのか、どうしたら行動するのか知りたかったからです。大学の中ではなく外で研究したいと思った一番の理由です。

――すごくキャッチーなタイトルですよね。
佐藤 
 私はアナログ人間なので、本を読んでいて気になったところや頭に浮かんだことがあると、ノートに全て書き出すようにしています。タイトル案も思いつく限り書いているうちに、ノート見開き二ページ分になっていました。そこから組み合わせてできたタイトルですが、とても気に入っています。

――対象を大学生にしたのには、何か理由があったのでしょうか。
佐藤 
 今の中学生や高校生は、テストや受験のための決められた勉強や宿題があって、それ以外のことをする暇がありません。私自身、大学生になって初めて自由に考える機会を得た気がしました。大学生には、勉強というのは自由であることを、少しでも気づいてもらいたい。好きな分野については効率や時間など気にせず、立ち止まってじっくり考えてみる。そこから得るものは意外に多いはずです。そういう思いもあって、あえて「大学生向け」としました。

――本にするにあたり、こだわった点はどこでしょうか。
佐藤 
 まずは「自分が読みたい」と心が動かされる本かどうかにこだわりました。自分の心が動かされないのに、人を動かせる気がしなかったからです。それを大前提としつつ、同時に読者フレンドリーな本を心掛けました。

『ハリー・ポッター』に、ビンズ先生というゴーストの教師が登場しますよね。彼は相手の顔も見ずに、自分が言いたいことだけを言って授業をする。現実でもそういう先生や、相手を無視して話を進める人がいます。そのような本にはしたくなかったんですね。読者の顔は見えないけれど、決して読者を迷子にさせない。特に、改めて原典にあたらなくても読み進めることができるよう気をつけました。

――作者であるJ・K・ローリング(以下ローリング)の発言が、多数引用されているのも大きな特徴です。
佐藤 
 作者自身の言葉があった方が、説得力も分かりやすさも増すと思ったんです。私は『ハリー・ポッター』シリーズが大好きなので、英語で発信された情報も常に追いかけています。しかし、誰もがその情報を知っているとは限りません。物語を読み解くために、重要だと考えられる発言は、なるべく多く紹介するようつとめました。その部分の翻訳も自分でしています。

――主人公ハリーが眼鏡をかけている理由について、象徴的な意味があると述べていましたが、その理由をお聞かせ下さい。
佐藤 
 『ハリー・ポッター』は、基本的にはハリー視点で物語が進みます。私たち読者は、ハリーの目を通してのみ、物事を知ることができる。ハリーが眼鏡をかけているのには、そうしたメタファーが込められています。

また、ハリーというのは、その視点で語るのに丁度いい人物なんです。親友であるロンの視点になると少しおふざけが過ぎそうですし、同じくハーマイオニーだと小難しい目で見た話になるかもしれない。校長のダンブルドア視点も気になりますが、きっと哲学に溢れた語りになるでしょうね。やはり、特別な力を持ちつつ、その他の点では「特別ではない」主人公の視点だからこそ意味があると思います。
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この記事の中でご紹介した本
ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?/小鳥遊書房
ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?
著 者:佐藤 飛美
出版社:小鳥遊書房
以下のオンライン書店でご購入できます
「ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?」出版社のホームページはこちら
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