佐藤飛美インタビュー 「好き」を「もっと好き」にする参考書 「『ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、教授、授業の題材にしませんか?」(小鳥遊書房)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年11月15日 / 新聞掲載日:2019年11月15日(第3315号)

佐藤飛美インタビュー
「好き」を「もっと好き」にする参考書
「『ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、教授、授業の題材にしませんか?」(小鳥遊書房)刊行を機に

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第2回
「閉心術」と才能/ハリーとドラコの比較

――2章では、ハリーと彼の最大の敵であるヴォルデモートを対比させる中で、血による差別について考察しています。
佐藤 
 『ハリー・ポッター』の世界には純血、半純血、マグル生まれ(両親が非魔法族の魔法使い)、スクイブ(魔法族生まれだが魔力の無い人物)などいくつかの血統が存在します。ローリング自身は、そのあいだに生じる差別はナチス・ドイツに通じるものがあると述べている。人種差別も「血」による差別ですが、血は差別するにあたっての一例にしか過ぎない。自分たちと違うものは受け入れられない、認めないというのは現実でもよく見られることです。

主役の三人ハリー、ロン、ハーマイオニーは、それぞれ半純血、純血、マグル生まれと全く違うグループに属します。でも友達として好きだから、血統を関係なしに付き合っている。それは当たり前のことのように見えて、当たり前ではない。この問題はとても難しいことだと思います。

――続く3章の「杖と性格」の項の分析は圧巻です。杖の材料となっている木の種類などに着目し、詳細に論じていく。杖の性質や正確な長さまで分かる一覧表まで付されており、佐藤さんがいかに『ハリー・ポッター』の世界に魅了されているかよく分かります。
佐藤 
 持ち物は個人の性格や生き方を表すものなので、杖から何が分かるのか、とても気になったんですね。できるだけ多くの登場人物の杖を分析したのですが、「杖木」に関しては、ローリングがどこまで意図的に考えていたか分からないところもあります。ただ、例えば、ヴォルデモートの杖はイチイから作られている。イチイは「死」や「再生」を象徴する木であり、これには明確な意図があると私は思っています。

――3章では、「愛」の多様性についても考察しています。特に、『ハリー・ポッター』を「愛の物語」としながら、「愛の弱点」についても細かく説き明かされており、興味深かったです。
佐藤 
 この物語で描かれる愛は、友愛や家族愛、恋愛といった分かりやすいものばかりではありません。後悔や哀れみ、憎しみなど、一見すると愛と対極にありそうな感情も、本質としては「愛」に通じるものがあるのではないか。また、「愛は万能でない」と書きましたが、そこは色々な経験をしていくと分かってくる部分ですね(笑)。

――感情を分析する箇所では、閉心術(心を閉じ、相手が自分の心情を読めないようにする魔法)を軸にして、ハリーと犬猿の仲のドラコを比較しつつ論じています。
佐藤 
 感情的になりすぎるがゆえに、閉心術を習得できないハリーと、同情心が欠けているからこそ習得できたドラコは、一見すると全く逆の存在に見えますが、実はそうでもない。ドラコに哀れみの感情が欠けているのは確かですが、彼がそもそも死喰い人(ヴォルデモートの部下)になった理由の一つは父親のためです。ドラコに愛がないわけでもない。

「閉心術ができる」=「哀れみの心がない」ということでもありませんし、ハリーのように感情爆発型がいいわけでもない。欠点に見えるものが素晴らしい才能に転じることだってありますし、ハリーとドラコのどちらが理想か判断しにくいものだと思います。
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この記事の中でご紹介した本
ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?/小鳥遊書房
ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?
著 者:佐藤 飛美
出版社:小鳥遊書房
「ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?」は以下からご購入できます
「ハリー・ポッター』について論文を書きたいので、 教授、授業の題材にしませんか?」出版社のホームページはこちら
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