原発のない女川へ 地域循環型の町づくりへ 書評|篠原 弘典(社会評論社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年11月23日 / 新聞掲載日:2019年11月22日(第3316号)

原発のない女川へ 地域循環型の町づくりへ 書評
原発のない未来という希望は残されているか

原発のない女川へ 地域循環型の町づくりへ
著 者:篠原 弘典、半田 正樹
出版社:社会評論社
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 パンドラの箱が開いた。原発事故関連死に関連自殺、広域かつ長期の避難生活、避難者いじめに嫌がらせと、あまたの災厄が飛び出した。そこに原発のない未来という希望は残されているか。いまだ「原子力緊急事態宣言」発令中の福島原発事故の避難者は、一方で「自分たちが指摘してきた通りの事故が起こった」と語り、他方で「まさか、自分の代で起こるとは思わなかった」「原発はそこにあるのが当たり前だった」と語ってきた。避難指示に苦しみ、帰還政策に憤り、愛着のある「ふるさと」を奪われた嘆きを再び繰り返さないために、原発を断捨離できるだろうか。

津波が舐めていった宮城県女川町。「復興のトップランナー」は、原発のない「地域循環型社会」として自立し、「復興の先でもトップランナー」になりうるという希望が、本書には描かれている。

第1章は原発の「安全神話」を問う。「原発安全神話」の崩壊のあとに「被曝安全神話」が生まれ、「安全基準」は「新規制基準」に姿を変えて原発再稼働が進んできた。新規制基準に適合した15基のうち、9基がすでに再稼働しており、女川原発2号機も2020年の再稼働を目指して基準に適合するよう審査を受けている。福島原発事故後に、4件のトラブルを発生させているにもかかわらず、である。

第2章は原発の「経済神話」を問い直す。女川町のデータからみると、「経済神話」の破たんは明瞭である。原発の経済効果は限定的で雇用創出にもつながらず、過疎化を食い止めることができていない。

原発がもたらしたのは何か。第3章は、原発立地計画が地域社会を二分し、破壊してきた経過を明らかにしている。人の心を壊し、歴史や文化、生活や経済に至るまで、とことん地域を壊していくのが原発だった。国内の原発54基が立地するのは17地域、対して原発を建設させなかったのは53地域。「生活の場を、仕事の場を、そして地域社会を、奪われることを直観する者は、人間としての尊厳を懸けて相対するのは当然」だったとはいえ、立地を阻止した地域でも、原発はトゲのように刺さったままだという。

すでに原発が立地した地域は原発の呪縛から逃れられるか。女川町が原発を断捨離した先には、どんなビジョンがあるか。第4章は、女川町が地域循環型社会として自立する可能性を探る。そこでは、食糧を自給し、エネルギーを自給し、人を育て福祉に手厚い社会、自立した経済循環を組み込んだ持続可能な社会が展望される。

折しも本稿の執筆中に、女川原発2号機の再稼働をめぐって、石巻市民が原発事故の広域避難計画には実行性がないと、再稼働の前提になる地元の同意の差し止めを求める仮処分申請を仙台地裁に申し立てたというニュースが飛び込んできた。どんな過酷事故でも克服できるという「復興神話」が頭をもたげ始めた現在、「原発のない女川」を構想する本書の意義は大きい。
この記事の中でご紹介した本
原発のない女川へ 地域循環型の町づくりへ/社会評論社
原発のない女川へ 地域循環型の町づくりへ
著 者:篠原 弘典、半田 正樹
出版社:社会評論社
以下のオンライン書店でご購入できます
「原発のない女川へ 地域循環型の町づくりへ」出版社のホームページはこちら
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