差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」 書評|荒井 裕樹(現代書館)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年11月23日 / 新聞掲載日:2019年11月22日(第3316号)

荒井裕樹著『差別されてる自覚はあるか 横田弘と青い芝の会「行動綱領」』

差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」
著 者:荒井 裕樹
出版社:現代書館
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 教職を取っている。介護実習に行くに際して障害についての理解を深めようと思い、手に取ったのが本書だ。

著者は障害者文化論の研究者である。脳性マヒ団体「青い芝の会」の中心人物で、伝説の運動家である横田弘さんの元へ通い続け、取材を基に本書を書いた。本書は障害者運動を牽引した横田弘さんの人生と「青い芝の会」の行動綱領を中心に、その思想哲学を記す重厚な評伝というべき一冊だ。障害者運動にかなり踏み込んだ重い内容だが読み易い。語り口調で書かれていることや、障害者運動を考えるうえでヒントになる寄り道が多く、読んでいるとき著者と川沿いを散歩しながら会話しているような気分だった。

もともと養護学校の卒業生が集う親睦団体だった「青い芝の会」が障害者運動を始める契機は、介護を苦に我が子を殺した一九七〇年の「脳性マヒ児殺害事件」にある。今では信じられないが、当時はこの種の事件が起きる度に「殺された児童もあのまま生きていても可哀相だった。むしろ母親に殺されて幸せだったはず
だ」と社会全体が加害者に同情するような風潮に包まれた。事件後、周辺住民が始めた減刑嘆願運動に対し青い芝の会は「減刑されては障害者の人間的尊厳や生存権が認められないことになる」として横浜地裁、横浜地検に意見書を提出した。母親に向けられた安易な同情、その背後にある偽善的な福祉や健全者思想を
横田さんは決して許さなかった。「障害者は不幸」という価値観そのものを変えようと、青い芝の会の機関紙に掲載されたのが本書のテーマである「青い芝の会 行動綱領 われらかく行動する」(以下「行動綱領」)だ。

「行動綱領」の第一項にはこうある。一、われらは自らがCP者である事を自覚する。われらは、現代社会にあって「本来あってはならない存在」とされつつある自らの位置を認識し、そこに一切の運動の原点をおかなければならないと信じ、且、行動する。

健全者が作った既存の社会体制の中に、新たに障害者を位置づけるため行う運動の活動主体は、障害者本人でなければならない。運動の原点は専ら「差別される側の自覚」に置かれた。第一項に見られる「青い芝の会」の屈強な主張は、今もなお現代社会に問題提起し続けている。

介護実習はとても楽しかった。確かに利用者の多くはそれぞれ困難を抱えているが、そこでは障害者か健全者かはほとんど関係がなかった。実習前の私は「障害の勉強をしよう」という気持ちで頭が一杯で、「誰かに会いに行く」というよりは、「何かを見に行く」という感覚に近く、今となっては想像力が無かった自分が恥ずかしい。

これからの地域社会で生きるために、「想像力を持って、人と人が繋がること」が必要だ。著者が言うように「国家は…」「社会は…」と大きな主語で語るのではなく、私は私として語ろうと思う。 私は異なる人の多様な価値観や考え方に触れ、困ったことがあれば互いに支え合い、悲しいことがあれば一緒に分け合って、どうしようもない怒りを感じたときは、共に声を上げたい。

本書は旧優生保護法救済法が成立した、今日の障害者問題の視座を示す一冊だ。
この記事の中でご紹介した本
差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」/現代書館
差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」
著 者:荒井 裕樹
出版社:現代書館
以下のオンライン書店でご購入できます
「差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」」出版社のホームページはこちら
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