第八回 日本医学ジャーナリスト協会賞 授賞式&記念シンポジウム|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年11月29日 / 新聞掲載日:2019年11月29日(第3317号)

第八回 日本医学ジャーナリスト協会賞 授賞式&記念シンポジウム

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右から、テレビ金沢の辻本昌平氏と中崎清栄氏、読売新聞の田中浩司氏、松永正訓氏、NHKの大野兼司氏
 
第八回日本医学ジャーナリスト協会賞の授賞式と記念シンポジウムが、十一月十八日、千代田区内幸町の日本記者クラブで行われた。

大賞は、松永正訓『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(四六判・二五六頁・一六〇〇円・中央公論新社)、優秀賞は「NHKプロフェッショナル仕事の流儀:「医療事故をなくせ、信念の歩み 医師・長尾能雅」(NHK制作局第2制作ユニット ディレクター大野兼司)、「東京医科大の恣意的不正入試事件に端を発した一連の報道」(読売新聞社会部「不正入試問題」取材班)、「化学物質過敏症 私たちは逃げるしかないのですか」(テレビ金沢「化学物質過敏症」取材班)がそれぞれ受賞した。

授賞式の後、受賞者による発表とディスカッションが行われた。大賞を受賞した松永氏が、発達障害について取材を通し導き出したのは、子が障害を持つという事実を親が受容するのは、キューブラー・ロスが『死ぬ瞬間』で示した、死を受け入れるまでの五段階と同じ段階を踏む、ということだった(【否認】誤診であると思い→【怒り】あちこちの医療機関を受診し→【取引】療育で障害を克服しようとし→【抑うつ】うまくいかない状況にぶち当たり→【受容】:諦めの境地に至る)。

そして必要なことは、「世間並みであることへの強いこだわり」や誰もが抱く「普通の欲」からの自由、だと続けた。先ほどの死の受容の五段階を反転させ、「受容:諦め」から、「開き直り」、「克服」、「新しい価値の構築」、「肯定:承認」に至るとき、第二の誕生がある。自閉症の子の心で考えること、親が「この世は安全」と教え、我が子と社会をつなげていくこと、子どもを変えるのではなく、親自身が変わることだと松永氏。「人生は理不尽なことや不条理の苦痛に満ちている。それを乗り越えるのが人生の意味であり、人が連帯することの重要性を、これからも書き続けたい」と話した。


医療事故調査制度がスタートし五年が経つが、ミス隠しで、報告数が想定を大幅に下回る。その中で「逃げない、隠さない、ごまかさない」という方針のもと、事故を未然に防ぐための取り組みをする名古屋大学病院の医療の質・安全管理部の現場にカメラが密着。その生々しい映像は、被害者家族だけでなく、医療関係者からの反響も大きかったと、「NHKプロフェッショナル仕事の流儀」ディレクターの大野氏は語った。

読売新聞社会部「不正入試問題」取材班は、東京医科大学が女子に対して一律に減点をしていた事件の詳細について、地道な取材と客観的データで医療界の「公然の秘密」を明らかにし、社会に衝撃を与えた。その一連の報道について、改めて発表した。

またテレビ金沢「化学物質過敏症」取材班は、食品添加物、化学肥料、柔軟剤、整髪料等々、私たちのごく身近に多数存在する化学物質によって、頭痛やめまい、吐気、鬱症状などに悩まされる人々を取材。現状、化学物質から逃れるより効果的な対処法はなく、ガスマスクをしての生活、山奥への引っ越し、通学できずに自宅学習を行ったり、仕事を辞めたり、離婚を余儀なくされるなど、孤立を深める人々の様子を映像の一部を用いながら伝えた。この衝撃的なドキュメントは、スポンサー企業との関係で、公開されるまでにも時間がかかったという。化学物質が体質の容量を満たしてしまえば、誰でも化学物質過敏症になりえる。今後ますます発症者は増える可能性があるが、いまだ環境省、厚労省は対策に手をつけていない。

現代を生きる我々にとって、見過ごしにできない四つの受賞作の発表に、ガツンと打たれるような痛感を得た時間だった。
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