限りなく透明に近いブルー 書評|村上 龍( 講談社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2019年11月27日

十代だから共感できる気持ち

限りなく透明に近いブルー
著 者:村上 龍
出版社: 講談社
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 今回は、第75回芥川賞を受賞した村上龍さんの『限りなく透明に近いブルー』を選んだ。 
題名は以前から知っていて、気になっていた。その題名から透明に近い綺麗で澄んだ青色=キラキラとした爽やかな青春物語を想像していた……のだが、「あらすじ」を読むと米軍住宅(通称ハウス)に住む主人公、リュウが仲間とともにドラッグや乱交パーティーに明け暮れる危ない青年たちの物語だった。自分が勝手に想像していたイメージとはあまりにも違って気分が悪くなり、私は直ぐに書店の棚へ戻してしまったのだ。しかし、文庫版の帯や、インターネットで口コミ検索をしてみると芥川賞史上第一位の発行部数を誇り、口コミも高評価だったので、気になってしまい、諦めきれずに勇気をもって手にした本だ。
先にも触れたが、危ない青年達の物語だ。だが、「あらすじ」だけでは伝わらない魅力があることが読んでみてわかった。
まず、読み進めるのが辛くなるような主人公たちの心情だ。周りの人達に言われるがままドラッグにおぼれ、自分を見失い、苦しむリュウ達。私には彼らが好き好んで薬物乱用を繰り返しているようには見えなかった。深く傷つき、心に穴が空いて満たされない。でも何をすれば心が満たされるのかがわからない。社会から見放され、自分が何をしていいのかが分からないだけで、汚れた世界をみなければ、幼い頃のあの純粋な世界のままでいられたらきっと彼らは救われたのではないだろうか。
印象的だったのは、村上さんの文章力を味わうことができるリュウが幻覚を見るシーン。リュウは、車から見える景色と自分の考えを重ね続けて大きな宮殿のような情景が頭の中で出来上がるという。「目を刺すネオンサインや体を真二つに引き裂く対向車のヘッドライト、巨大な水鳥の叫び声そっくりの音で追い抜いていくトラック、突然立ちふさがる大木や誰も住んでいない道端の壊れた家、わけのわからない機械が並び煙突から炎を噴き上げる工場、鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える曲がりくねった道路」「全ては自ら光っている」。読んでいるだけで平衡感覚を見失いそうになる狂った幻想世界が表現されている。
若者のドラッグというと、先日キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」を観た。この映画も最初から気分が悪くなり、途中で観ることができなくなってしまった(数日後、最後までみたのだが)。暴力シーンが凄まじ過ぎて目を伏せたくなる。しかし、ドラッグ漬けの主人公にも、そうなるきっかけがあり、時代背景もある。また誰にでも暴力を振るうわけでもなく、彼らなりの正義という名の元に行動していた。私たちが抱える、せわしない大人達への皮肉や権力、学力、財力が物をいう社会への不満や不安を感じた。
本書を読み終わった後は、何だかぼーっと余韻に浸ってしまっている自分がいた。リュウ達の将来について考えてしまいなかなか眠りにつくことができなかった。何か心が満たされない空虚感、自分は何をしたいのかがわからず周りに流されてしまう、リュウ達と同じ十代だから感じる気持ちがあったからだ。
最初は手に取るのを戸惑っていたが、今となってはこの15歳という歳で出会えてよかったと思う。自信をもって高校生に薦めたい一冊だ。

この本の題名だけみた第一印象はこんな爽やかな青空でした。
この記事の中でご紹介した本
限りなく透明に近いブルー/ 講談社
限りなく透明に近いブルー
著 者:村上 龍
出版社: 講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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