信田さよ子/S・キャンベル/上岡陽江著 被害と加害をとらえなおす 虐待について語るということ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年11月30日 / 新聞掲載日:2019年11月29日(第3317号)

信田さよ子/S・キャンベル/上岡陽江著
被害と加害をとらえなおす 虐待について語るということ

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 シャナ・キャンベル氏の体験ほど衝撃的な話は、そうそう聞くことはできないだろう。母親が家を出、二、三歳のころからおじに性的虐待を受け、薬物依存、夫からのDV、売春、殺人未遂と心身ボロボロの状態から生きのびて、アミティ(犯罪者やあらゆる依存症者の社会復帰を支援する非営利団体)母子プログラムディレクターとなった。キャンベル氏の語りからは、この社会に確実に存在し、なお隠されている構造が見えてくる。ささやかで確かな生活を積み上げることの大事さ。壊すことは簡単で、それを回復するのにいかに長い長い時間と「ここにいていい」と伝えてくれる安心な場所が必要か。

本書は『虐待という迷宮』(2004)の改題増補版で、刊行当時から十五年経つが、なおいま読むべき本である。

本書はいくつかのパートからなる。Ⅰはキャンベル氏の語り、Ⅱはキャンベル氏、臨床心理士の信田さよこ氏と、薬物・アルコール依存症、摂食障害からの回復者で、ダルク女性ハウス代表の上岡陽江氏の鼎談(上岡氏の当事者としての経験も語られる)、Ⅲは信田氏による「暴力」のカテゴリー分けと定義、「被害者」についての分析、Ⅳは信田氏と上岡氏の対談。さらに今夏、二〇〇四年の刊行当時を振り返り、虐待をめぐる状況の変化について語った信田氏、上岡氏の対談を増補する。

繰り返し語られるのは、「名づけること」の重要さ。そして「ストーリーを語ること」の大切さ。信田氏は、ようやく日本でも「家庭内暴力」が俎上に載るようになったことを喜ばしいと書く。「家族は安心」という自明性の後ろに「暴力」が長い間秘されてきたからだ。「名づけないこと、名づけるのを禁じることはそれだけで一つの力の行使である」。加害・被害をとらえなおし、被害者が加害者を超えることが必要だ、と信田氏はいう。超えるとは、加害者を支えるからくりを知ること。そのために体験を文章化し人と分かち合おうとする。既成の表現を越えて、新しい言葉を作ろうとする。読めば虐待、DVについて全てが分かる一冊である。(四六判・二四〇頁・一八〇〇円・春秋社)
この記事の中でご紹介した本
被害と加害をとらえなおす 虐待について語るということ/春秋社
被害と加害をとらえなおす 虐待について語るということ
著 者:信田 さよ子、シャナ・キャンベル、上岡 陽江
出版社:春秋社
以下のオンライン書店でご購入できます
「被害と加害をとらえなおす 虐待について語るということ」出版社のホームページはこちら
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