良い占領? 第二次大戦後の日独で米兵は何をしたか 書評|スーザン・L・カラザース(人文書院)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月7日 / 新聞掲載日:2019年12月6日(第3318号)

良い占領? 第二次大戦後の日独で米兵は何をしたか 書評
国家的神話を批判する
占領者の感情や行動の複雑な多面性を強調

良い占領? 第二次大戦後の日独で米兵は何をしたか
著 者:スーザン・L・カラザース
翻訳者:小滝 陽
出版社:人文書院
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 本書はSusan L. Carruthers,The Good Occupation: American Soldiers and the Hazards of Peace(Harvard University Press, 2016)の全訳であり、構成は以下である。
序論=「占領」という不快な言葉/第1章=占領準備第/2章=征服の日々/第3章=アジアでの勝利を演出する/第4章=兵士と性/第5章=根こそぎにされた人、不機嫌な人/第6章=低下する士気、動員解除を望む声/第7章=「タダ」でほしがる兵士たち/第8章=家庭的な占領/結論=良い占領?/訳者解説/註/事項索引/人名索引。

第二次世界大戦後のドイツや日本における占領は、民主主義・進歩・繁栄の使者としてのアメリカの役割を象徴的に示す「良い占領」としてアメリカ人の国民的記憶となり、イラク占領の正当化にも利用された。本書は米軍高官から兵卒にいたるまで、あらゆる階級の兵士が書き残したり口述したりした、刊行および未刊行の手紙・日記・覚書(パーソナル・ドキュメント)や当時の新聞記事等の史料を活用し、被占領者に対する猜疑心、優越感、特権意識、差別感情、占領任務への嫌悪感、上官や部下への不満、被害者意識等、アメリカ兵の複雑な自意識、感情、思考、行動、情勢認識を描いている。そうすることで、ドイツや日本における占領が、実際には単純で慈悲深いものではなく、多面的で複雑なものだった点を明らかにし、「良い占領」という国家的神話を批判している。従来の研究では、被占領者がどのように「敗北を抱きしめ」たのかという点に着目するものが多かったが、現地駐留の占領者がどのように「勝利を抱きしめ」たのか、という点はあまり分析されてこなかった。本書はその点に光をあてたものである。

第二次世界大戦後、多くのアメリカ人兵士は廃墟となった敗戦国の社会に秩序と正義をもたらすために、嫌々ながら占領業務に従事した。占領者は難民や強制収容所の生残りユダヤ人等を含む被占領者と向かい合った。放蕩、偽善、性差別、人種差別、反ユダヤ主義、そういったものに賛同しない者との緊張関係等が占領者の間ではびこっていた。占領軍は上意下達が貫徹した組織ではなく、占領者と被占領者の性的交わり、被占領者の物資や財産の略奪、米軍物資の横流し等が横行した。このように、本書は占領者の感情や行動の複雑な多面性を強調している。

本書を読み、二点思うことがある。

①なぜアメリカ人は「良い占領」神話を頑なに信じているのだろうか。移民国家アメリカは人工的な統合の象徴が必要であり、この神話も多様なアメリカ人をまとめあげる道具に過ぎない。日本が本格的に移民を受け入れるのか否かを考える際の参考になるかもしれない。

②本書は一国史的視点で描かれており、立体性に欠ける。占領者の感情、行動、心理的影響等は被占領者との相互作用で起こるものだが、その相互作用の分析が欠如している。被占領者のパーソナル・ドキュメントとの突合せが必要となるものであり、今後の研究を待ちたい。

本書は難解な専門用語をほとんど使わずに書かれており、第二次世界大戦後のアメリカの占領政策に興味のある人にとっては必読の書物である。
この記事の中でご紹介した本
良い占領? 第二次大戦後の日独で米兵は何をしたか/人文書院
良い占領? 第二次大戦後の日独で米兵は何をしたか
著 者:スーザン・L・カラザース
翻訳者:小滝 陽
出版社:人文書院
以下のオンライン書店でご購入できます
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