キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで 書評|指 昭博(中央公論新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月7日 / 新聞掲載日:2019年12月6日(第3318号)

キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで 書評
文化現象・社会現象の 観点で「死」を巡る

キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで
著 者:指 昭博
出版社:中央公論新社
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 人は死んだらどうなるのか、という問いに対しては、古今東西、さまざまな宗教がそれぞれの答えを用意し、またそれに応じた葬送儀礼が行われ、墓地やモニュメントが設けられ、さらには数多くの芸術作品が生み出されてきた。「宗教と死」というのは、宗教学と死生学、両者の関心が重なり合う大きなテーマであるが、本書は中でもキリスト教と死の問題に焦点を当て、それに関わる数多くのトピックを収めている。目次を示すと、「第一章 キリスト教の来世観」、「第二章 幽霊の居場所」、「第三章 死をもたらすもの」、「第四章 死と葬儀」、「第五章 墓と社会」、「第六章 モニュメント」となっているが、これは、死のプロセスを「何らかの原因で人は死に、遺された者は葬送儀礼を行い、そして死者は旅立ち、墓やモニュメントが作られる」という一連の流れとして捉え、そのすべてを網羅的に扱っているということである。ただし、本書には何か一貫した主張があるわけではない。「死とは何か」について哲学的、宗教的、思想的な思索が深められているわけでもない。そうではなく、死を巡る数々のエピソードが主題別にまとめられているのであって、それゆえ肩肘張らずにどこからでも自由に読み進めることができる。

各章ごとの内容を以下で簡単に紹介しよう。第一章ではキリスト教の来世観が、天国と地獄、煉獄、往生術、プロテスタントの来世観といった観点からまとめられている。第二章は「幽霊の居場所」についてだが、これは少々説明が必要だろう。キリスト教と言っても、カトリックは煉獄の存在を認めるが、プロテスタントは煉獄を否定した。煉獄とは死んだ者が天国や地獄に振り分けられる前の「待合所」のようなところだが、それは死後、天国にも地獄にも行っていない人たちの存在を認めることを意味した。著者によれば、幽霊というのはそうした天国にも地獄にも行けない人たちだが、プロテスタントによって煉獄が否定されてしまったことで、幽霊は行き場を失ってしまったということである。第三章では「死をもたらすもの」として、疫病・災害・住環境、処刑、そして殉教が取り上げられている。第四章では、葬儀に関して、埋葬のあり方や国王の葬儀についてまとめられている。第五章は墓について、第六章ではモニュメント(例えば戦争の英雄を記念するモニュメントなど)についてそれぞれ論じられている。著者の筆の動きは滑らかであり、キリスト教の話を中心としながらも、時に馴染みのある日本の事例・事情などについて触れられ、また数々の文学作品や映像作品への言及も多い。死というものを哲学的・思想的に深く分析していくというよりも、文化現象・社会現象という観点から死に関する事例を集めた本書は、「キリスト教と死」をテーマとした小辞典、ハンドブックであり、キリスト教の歴史やプロテスタントとカトリックの違いなどの基礎知識を身につける上でも、初心者に手軽に読めるおすすめの一冊である。
この記事の中でご紹介した本
キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで/中央公論新社
キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで
著 者:指 昭博
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで」出版社のホームページはこちら
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