ジャン・ドゥーシェ氏偲ぶ会レポート 「彼はいつも、私の必要とする最初の眼差しであった」(バルべ・シュローダー) 久保 宏樹|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年12月10日 / 新聞掲載日:2019年12月6日(第3318号)

ジャン・ドゥーシェ氏偲ぶ会レポート 「彼はいつも、私の必要とする最初の眼差しであった」(バルべ・シュローダー)
久保 宏樹

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ドゥーシェの写真を前にスピーチするフレデリック・ボノー
十一月二二日未明ジャン ・ドゥーシェ氏が亡くなった。

彼の正確な死因については不明なままである。しかし、それに至るまでにいくつかの段階を経ていた。彼が最後に公の場に姿を見せることになった九月の初め、シネクラブ(ドライヤーの『怒りの日』)のために、ヴァカンス先から直帰してきたドゥーシェは、非常に疲れた様子であった。それから数日後には、「目が見えなくなって来た」と言い始め、寝込みがちになった。その後、徐々に視界が失われている様子が感じられていった。死の三週間ほど前には、片目の視力が完全に失われ、残された目の微かな光によって生活をしなければいけなくなっていた。そのような状況の中、体調不良を訴え病院に移った。そして、それから数日後に亡くなった。

 *

十一月二六日には、パリのシネマテーク・フランセーズにおいて「ジャン・ドゥーシェへのオマージュ」と冠して、代表者たちによるスピーチと特別上映会(短編『クラック』〔ドゥーシェ監督、クロード・シャブロル、ビュル・オジエ出演〕と『ジャン・ドゥーシェ、ある映画批評家の肖像』)が行われた。故人の意思により葬式が行われないため、友人たちによる唯一の葬儀のようなかたちとなった。

参加者は、普段シネマテークで見かける顔ぶれから、『カイエ・デュ・シネマ』のかつての批評家、そして映画作家の姿が見受けられた。故人と親しかった有名人の参加者としては、『カイエ』からジャック・ボントン、ノエル・シムソロ、映画作家としてはバルべ・シュローダー、アンドレ・テシネ、セドリック・アンジェ、アルノー・デプレシャン、ノエミ・ルヴォウスキ、加えてビュル・オジエの姿も見受られた。

本来ならば誰よりもその場にいるべきであったグザヴィエ・ボーヴォワは、ノルマンディー地方での新作撮影のため参加することはなかった。彼からは「書くことはできない。泣くことと撮ることしかできない。撮影して笑うだけだ。ドゥーシェがいい息子を誇るために、撮影して、いい映画を作ることしかできない」という短いメッセージが送られてきた。

スピーチは、シネマテーク・フランセーズ館長フレデリック・ボノーによって始められた。彼は、ドゥーシェの映画観と分析法について説明をしながら、シネマテークとの関係について「ドゥーシェとシネマテークの関係は、二〇一九年に五〇年目を迎えていた。アンリ・ラングロワがシネクラブを行えなくなった六九年に、ドゥーシェが引き継いだという話が正しいのならば、「ジャン・ドゥーシェのシネクラブ」は、おそらく世界中で最も長く続いたものであった」と述べた。

その後、ジャック・ボントンにより六〇年代『カイエ』編集部におけるドゥーシェについて、ノエル・シムソロによってそれ以前のドゥーシェの姿も語られた。

続けてバルべ・シュローダーは、ドゥーシェとの思い出を語りながら「彼はいつも、自分の映画の最初の観客だった。私の必要とする、最初の眼差しであった」と述べた。シネマテーク・ブルゴーニュのニコラ・プティオは、いかにしてジャン・ドゥーシェの名を関したシネマテークが、ドゥーシェの意志のもとで創設され運営されているのかを説明した。

かつてドゥーシェの家に居候をしていたセドリック・アンジェは、ドゥーシェによって多くの人の人生が変わったということについて、自分が映画の世界に引き入れられた経緯、ドゥーシェによって食材探しのためにパリ中を連れ回された思い出、そして自宅に連れて行ったガラの悪い若者たちと一緒になって楽しんでいたドゥーシェの日常の姿を語った。

アルノー・デプレシャンは、ドゥーシェとの関係について、彼の映画のモノローグのような詩的な文章を読み上げた。その後、ノエミ・ルヴォウスキによる詩の朗読、そして彼についてのドキュメンタリーを作った若き映画監督たちによるスピーチが続いた。最後は、スクリーンに映し出されたドゥーシェの写真に対しての、数分にわたるスタンディングオベーションで締め括られた。
(くぼ・ひろき=映画研究者・パリ在住)
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