新・大阪モダン建築 戦後復興からEXPO’70の都市へ 書評|橋爪 紳也 (青幻舎 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月14日 / 新聞掲載日:2019年12月13日(第3319号)

新・大阪モダン建築 戦後復興からEXPO’70の都市へ 書評
建築を通してみる 都市・大阪の時代の記録

新・大阪モダン建築 戦後復興からEXPO’70の都市へ
著 者:髙岡 伸一、三木 学
監修者:橋爪 紳也
出版社:青幻舎
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 本書は1945年から1970年という時期に大阪に建設された代表的な42の建築を、「占領下、戦後復興期」、「高度経済成長の始まり」、「東京オリンピックまで」、「大阪万博・高度経済成長期の終焉まで」の四期に分けて、工事中や竣工時の写真をふんだんに使い紹介している。大阪万博の建築については別途章を設けている。しかし、いわゆる建築ガイドブックではない。建物たちはエリア別ではなく時系列順に掲載されているし、現存しない建物も多数、紹介されている。「都市と建築」と名付けられた、当時の社会背景を説明するようなコラムが多数挟みこまれているなど、建築ガイドブックとは異なる点が多々ある。著者の高岡はあとがきにて、「加速度的に激しさを増す都市の変化のありようを、何より伝えたいと考えた」と書いている。つまり、本書は建築を通じてみる、大阪という都市が経験したある時代の記録なのである。

では、それはどんな時代であったか。東京に先駆けて、近代化を押し進めた戦前期の大大阪時代に続く、新大阪時代だという。建築は巨大化し、交通と一体化し、面的に林立していった。しかし、歴史の速度はめまいがするほど早い。本書が扱っている新大阪時代は、終戦後のほぼ25年間に過ぎない。つまり、今の感覚でいえば、1990年代後半くらいから現在までくらいのあっという間の短い期間の中での話であるのに、かくも多様でアイデアに満ちた建築が、大阪という1つの都市に建ちならんだ、そのことに驚愕を覚える。次々に「新しさ」が建築を通じて生み出された新大阪時代―何という興奮の時代であったことか!

特に印象的だった建築は、戦前期に着工し、戦時中の資材統制により途中段階で竣工し、戦後、満を持して増築された阪急航空ビルや大阪神ビルディング、高さ制限の適用除外特例が下りないまま一旦制限内の31mで竣工、引き渡しされた前日に許可が下り、すぐに12階建てにまで増築した第一生命ビルディングである。統制や制度にいったん抑えつけられても、最終的にはそれらを跳ねのけて、上へ伸びた。そこに、この時代の建築を生み出したパワーの源を見る。抑圧から解放へ。高岡は「都市こそが、その建築を設計した」と書く。本書はある時代の大阪という都市が持っていた熱量を今の私たちに伝えようとする。私たちはその熱量をどのように受けとめることができるだろうか。

現存するものは半数にも満たないというのも、改めて考えるとすごいことである。半数以上の建築が半世紀程度の寿命を全うできずに消えていった。それらの建物たちにも現住所が付されている。それを頼りに現場に立てば、熱量が継承されたかどうかの検証は容易だろう。一方で現存する半数弱の新大阪モダン建築は熱量を伝える窓である。これ以上失われると、その窓は曇ってしまう。建築と市民との距離をぐっと縮めた「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」を育て上げてきたのはこの本の著者たちである。この生きた「新大阪モダン建築」を通じて、今度は都市の近過去と市民との距離が縮まる、本書はその予感に満ちている。
この記事の中でご紹介した本
新・大阪モダン建築 戦後復興からEXPO’70の都市へ/青幻舎
新・大阪モダン建築 戦後復興からEXPO’70の都市へ
著 者:髙岡 伸一、三木 学
監修者:橋爪 紳也
出版社:青幻舎
以下のオンライン書店でご購入できます
「新・大阪モダン建築 戦後復興からEXPO’70の都市へ」出版社のホームページはこちら
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