令和元年 二〇一九年の収穫!! 42人へのアンケート|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月13日 / 新聞掲載日:2019年12月13日(第3319号)

令和元年
二〇一九年の収穫!!
42人へのアンケート

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令和元年・年末恒例のアンケート特集「二〇一九年の収穫」! 今回もさまざまな分野の専門家、研究者、作家、書評家、編集者、書店の方などに、今年印象に残った三冊を自由に選んでいただきました。今年の読み忘れはありませんか? 見逃していた一冊がきっと見つかるはず!   (編集部)


【2019年の収穫 執筆者一覧】
青木亮人(近現代俳句研究者)/荒川洋治(現代詩作家)/江川純一(宗教学)/江南亜美子(書評家)/落合教幸(日本近代文学研究者)/小野俊太郎(文芸評論家)/小野菜都美(ルリユール書店店主)/角田光代(作家)/角幡唯介(作家・探検家)/亀山郁夫(名古屋外国語大学学長)/風間賢二(幻想文学研究家・翻訳家)/金原瑞人(翻訳家)/神藏美子(写真・映像作家)/神田法子(ライター)/栗原康(アナキズム研究)/越川芳明(明治大学教授)/小林章夫(上智大学名誉教授)/小松美彦(東京大学大学院教授)/佐久間文子(文芸ジャーナリスト)/佐々木力(中部大学高等学術研究所特任教授)/佐藤淳二(京都大学教授)/重信幸彦(民俗学)/宍戸立夫(三月書房店主)/柴野京子(上智大学准教授)/白石正明(医学書院編集者)/外岡秀俊(ジャーナリスト)/谷藤悦史(早稲田大学教授)/豊﨑由美(書評家)/中村邦生(作家)/中森明夫(作家・アイドル評論家)/西野智紀(書評家)/東直子(歌人・作家)/福間健二(詩人・映画監督)/藤田直哉(SF・文芸評論家)/堀千晶(仏文学)/枡野浩一(歌人)/松永正訓(小児外科医・作家)/柳原孝敦(東京大学教授)/山本貴光(評論家・ゲーム作家)/吉川浩満(文筆家)/與那覇潤(日本近現代史)/明石健五(本紙編集長)
第1回
與那覇 潤

①荒木優太編著『在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活』(明石書店)
②綿野恵太『「差別はいけない」とみんないうけれど。』(平凡社)
③平山周吉『江藤淳は甦える』(新潮社)
震災の年の取材で、「まじめに研究していれば大学のポストはある」という感覚だった年長世代や、「自分から積極的にPRしないとポストはない」の私の世代を越えて、「そもそも大学に職を得ようと思わない」ことが前提の若い世代が出てきている、と述べたことがある。だから①の登場自体は想定内だったが、思ったより「早かったな」というのが偽らざる実感だ。
話題を席巻した②も在野の若手批評家の手になるもので、逆に③は老舗出版社を定年退職した編集者が、在職時に培った調査技法と人脈を駆使して執筆した。前者は眼前の社会問題、後者は戦後文学史の巨人を論じて、それぞれ決定版だと高く評価されたが、この調子だと大学勤めの学者のほうが、自らの存在意義を社会に向けて訴える『在官研究ビギナーズ』を出す日も遠くないだろう。もしそれすら作る甲斐性がないなら、制度もろとも滅ぶほかないし、かつ甦えることもありえまい。(よなは・じゅん=元公立大学教員・日本近現代史)
佐藤 淳二

①桜井哲夫『世界戦争の世紀』(平凡社) 死の大量生産方式の確立としての両大戦が、仏知識人を軸に描かれる。総力戦のパノラマの内では、平和もまた「総動員」されてしまう。
②沖公祐『「富」なき時代の資本主義』(現代書館) 勃興期の米国に『資本論』は的中したが、いまや中国の巨大な復活は、近代の真の終焉を告げる。誰も無傷でいられない変動期に、「限界」と「制限」というマルクスの発想から、グローバル資本の「幽霊化」を剔抉する。
③アリエズ/ラッツァラート『戦争と資本』(杉村昌昭・信友建志訳、作品社) 「限界」と「制限」の論理は、戦争機械中枢も駆動する。戦争機械は、レーニンとシュミットに発し、個人・階級・国家から生そのものを貫く。フーコーへの批判は、本質的な課題を指示する。すなわち、「世界内戦」の無制限な自己産出により、壊滅し敗北したこの五〇年を再活性化すること。必読の第一二章は特に、陰鬱なまでに重い収穫だ。(さとう・じゅんじ=京都大学教授・思想史)
豊﨑 由美

山あり谷ありにもほどがある人生を送った1936年生まれの作家、ルシア・ベルリンの短篇集が『掃除婦のための手引き書』(岸本佐知子訳、講談社)。静けさと賑やかさ、緩やかさと烈しさ、笑いと哀しみを自在に操る巧みな文体で描かれるエピソードや情景、キラーフレーズに心揺さぶられっぱなしの24篇だ。

リチャード・パワーズの『オーバーストーリー』(木原善彦訳、新潮社)は、樹木と何らかの関わりを持つ9人が、その来し方を描く「根」の章を経て、次章「幹」で互いの人生を交錯させていく長篇。樹木ひいては地球の生命を守ろうと奮闘する人々の闘争を描き、壮大にして繊細にしてファンタスティックな物語になっている。

第二次世界大戦末期におけるハンガリーの史実をもとに、多面体である人間の卑劣と崇高、愚かさと賢さ、冷酷と人情、その諸相すべてを描ききった凄まじい傑作が、佐藤亜紀の『黄金列車』(角川書店)。これは日本文学にあらず、世界文学と呼ぶにふさわしい。(とよざき・ゆみ=書評家)
角田 光代

大島真寿美『渦』(文藝春秋)
奥田英朗『罪の轍』(新潮社)
ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』(岸本佐知子訳、講談社) 人形浄瑠璃についても、近松半二という作家についても知識はないのに、『渦』の小説世界にすーっと取りこまれてしまった。リズミカルな文章を追ううち、今まで感じたことのないような興奮を覚えてくる。このわくわくとした興奮は、物語が生まれる瞬間に立ち会っているからこそ味わえるものだ、と気づいて感動した。『罪の轍』は、昭和三八年に起きた男児誘拐事件を彷彿とさせる事件を描く。隅々にまでリアリティがあり、人物すべてが生きている。テレビやラジオを用いた公開捜査に、一般人の野次や誹謗中傷があふれるさまは、今の私たちの現実と生々しく地続きだ。二〇〇四年に亡くなった作家の小説集『掃除婦のための手引き書』に、あらたに光をあてた編集者や訳者に私は心からお礼を言いたい。ごく短い短編から、連作となる小説、舞台も語り手も異なるが、すべての小説に「生きること」の断片があって、しかもそれがどくどくと脈打っている。それらの断片は、本当にさまざまな色合い、表情を見せる。生きるとはこんなに残酷なほどゆたかなものかと思い知らされる。(かくた・みつよ=作家)
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