【横尾 忠則】髭と手袋と歯痛。ひとりでゴソゴソ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年12月16日 / 新聞掲載日:2019年12月13日(第3319号)

髭と手袋と歯痛。ひとりでゴソゴソ

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アトリエにて中村哲郎さんと
2019.12.2
 磯﨑憲一郎さんが増田屋に行ったら、「横尾さんが来てくれない、髭のことを言い過ぎて」「横尾さん怒ってますよ」「反省しています。来てくれないと店をたたもうかと思っている」
「僕からお願いします、横尾さん、行ってあげて下さい」

『ユリイカ』に和田誠君のこと10枚書く。『婦人画報』に温泉旅行のこと2枚。『週刊NY生活』(USA)近況3枚。

徳永に貰った手袋を片方紛失したので、今日長男にユニクロで買って来て貰おうと思っていたそのタイミングで、徳永から2つ目の手袋をプレゼントされる。紐をつけて首からぶら下げようかな。
2019.12.3
 神戸から林さんが次回展のカタログデザインのチェックに。ところがデザイナーの白井さんが一週先と勘違いして来ず。わざわざ神戸から足を運んだのに空振り。プロのデザイナーとしてはあるまじき行為なり。
2019.12.4
 『Pen』でニューヨークで会った3日間のジョン・レノンについてのインタビュー。忘れかけていたことを次々思い出してひとり懐かしく思う。

小説家の岸川真さん来訪。色々相談にのってもらう。

夕方、朝日の書評委員会に。帰りは夜の銀座を車で銀ぶら。街のイルミネーションにしばし陶酔。夜の外出は疲れる。
2019.12.5
 〈旱魃ニ見舞ワレタ土地ニワズカナ小サイ水タマリ、ソコニ小魚ガ集マッテイルガ、ヤガテ水モ蒸発シテ小魚ハ死滅スルダロウ。彼等ノ命ノアル間ニ雨ガ降ッテ、水タマリヲ広ゲテクレルコトヲ願ウ〉夢。

歌舞伎研究家の中村哲郎さん来訪。ぼくがいっさい忘れている話ばかり。パリの洗濯船に隣接したパラダイスホテルに2ヶ月ばかり投宿している時、中村さんも同じホテルに泊まっていて、朝9時半にいつも中村さんに起こしてもらっていたとか、三島さんの葬式にわが夫妻と、高橋睦郎と中村さんの4人で食事をしたとか。妻はいなかったはず。パリで竹本忠雄さんと3人で食事をしたとか、朝日賞の授賞式で会ったとか、どれひとつ記憶にない。今日の用件は『中村勘三郎の死』の装幀の依頼に中央公論新社の吉田大作さんと。それが不思議なことに今日が勘三郎さんの命日だという。新聞にも出なかったが、堂本正樹さんが9月に亡くなったことを知らされる。

午後猛烈に歯が痛む。

台湾の出版社より刊行された『創造&老年』が2019年美好生活好書奨とかいうのを受賞したという通知あり、受賞のコメントを送る。台湾ではすでに3冊の本が出版されていて、自伝は台湾の文学大賞を受賞している。
アトリエにてアラン・チャンさんと
2019.12.6
 香港のデザイナー、アラン・チャンさん来訪。彼は日本でも個展をしていて京都にギャラリーも持っている。香港にも大きいギャラリーを持っていて、そこでの個展のオファー。今しばらく考えさせてもらう。

午後、久し振りに花田紀凱さん来訪。ぼくの爆笑話を本にしたいと20年ほど前から言っていて、まだ言っている。まあ実現しないだろうなあ。『月刊 Hanada』に別のテーマでエッセイを書くことになった。

昨日から歯が痛む。疲れが原因だろう。
2019.12.7
 午後遅く、宇野亞喜良さんが成城に来たといって寄ってくれる。4年前に杉浦康平さんと公開対談した時の対談録を持って。2人の対談に出てくる色んなデザイナーは、知っている人達ばかりだけれど、2人が交流した時代にぼくはほとんどというか全く部外者だった。みんな、まめに交流していたらしいが、ぼくはほとんど、交流がない。デザイン界には属していたけれど、ぼくは集団行動をほとんどしていない。ひとりでゴソゴソやっていたようだ。人見知りするのか、話が下手だったせいか、まあ自信がなかったのかな。宇野さん、和田君以外では、ほとんど孤立していたようだ。

ピカビアに、シャンプーと髭のトリミングに。
2019.12.8
 大晴天。歯が痛むので桂花で中国粥と麻婆豆腐の昼食。帰りに三省堂に寄るが、本だらけ(当然)で、疲れる。店内を素通りするだけで帰る。

書評用の本を読む。

夜、書評の下書きをする。書評をするようになってからは他の本を読むことはほとんどなくなった。だんだん自主的に行動するより与えられたことをしている方が楽というか、運命に従がっていることの快楽のようなものが味わえていい。これも老齢の生き方のような気がする。(よこお・ただのり=美術家)
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