ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間 書評|桑木野 幸司(白水社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 読書人紙面掲載 書評
  4. 芸術・娯楽
  5. ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間 書評|桑木野 幸司(白水社)
  6. ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間の書評
読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月21日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間 書評
目を引く領域横断的アプローチを駆使した著作

ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間
著 者:桑木野 幸司
出版社:白水社
このエントリーをはてなブックマークに追加
今年は、様々な意味で領域横断的なアプローチを駆使した著作が目を引いた。
桑木野幸司『ルネサンス庭園の精神史――権力と知と美のメディア空間』(白水社)は、綿密な実地調査を行ったうえに領域横断的な手法を駆使して、自然科学・工学技術や博物知識の集積場にして、美術品の展覧スペース、政治的なプロパガンダ装置でもある、イタリア・ルネサンスの名苑奇園の魅力を浮き彫りにした意欲作。

画家ポール・セザンヌと作家エミール・ゾラの友情は、破滅的な画家を主人公にしたゾラの『制作』を機に破綻した、と長らく考えられてきたが、『セザンヌ=ゾラ往復書簡――1858-1887』(アンリ・ミトラン校訂・解説・注、吉田典子/高橋愛訳、法政大学出版局)は、その通説を覆し、絵画と文学における思考の交錯を浮かび上がらせる。

二〇世紀美術に関する大きな収穫は、難解といわれるキュビスム芸術の全貌に迫った大著、松井裕美『キュビスム芸術史――20世紀西洋美術と新しい〈現実〉』(名古屋大学出版会、本紙書評[二〇一九年五月三一日])である。一九〇七年から一九四七年という長いスパンにわたるキュビスム芸術の変遷と国際的な拡がりを、日本ではあまり知られていないピュトー・グループのキュビストにも光を当てながら論じている。

ハル・フォスター、ロザリンド・E・クラウスほか『ART SINCE 1900――図鑑 1900年以後の芸術』(尾崎信一郎ほか編集委員、東京書籍)は、アメリカ美術史学で影響力を持つ「オクトーバー派」が、一九〇〇年以後から現在までのアートの流れを、言語学や精神分析学、社会思想などを援用しながら、編年体で詳述した浩瀚な〈アートの教科書〉の待望の全訳。クラウスに関しては、精神分析を採り入れて、モダニズムの中核をなす「視覚性」を批判的に分析した主著の邦訳、『視覚的無意識』(谷川渥・小西信之訳、月曜社)も刊行されている。

ジェンダーの観点からは、児島薫『女性像が映す日本――合わせ鏡の中の自画像』(ブリュッケ)が、明治初期から昭和戦前期までの日本美術のジェンダー的・植民地主義的構造を、絵画に描かれた女性像を通して考察しており、とりわけ藤島武二論が秀逸。中嶋泉『アンチ・アクション――日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ)は、「アクション・ペインティング」に対抗し、それと差別化しようとする態度(著者の言葉によれば「アンチ・アクション」)を共有する三人の女性美術家(草間彌生、田中敦子、福島秀子)を取り上げ、戦後美術史をジェンダーの観点から読み直す。

日本美術史と西洋美術史という区分を乗り越える著作も刊行されている。宮下規久朗『そのとき、西洋では――時代で比べる日本美術と西洋美術』(小学館)は、同時代の日本美術と西洋美術をパラレルに比較する視点が、ダイナミックな世界美術史観を生む。山本浩貴『現代美術史――欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社)は、コンパクトな新書だが、西洋中心的な記述に抗して、日本美術の動向や、国家の概念に縛られない枠組み(トランスナショナル)に多くの紙幅を割いている。
この記事の中でご紹介した本
ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間/白水社
ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間
著 者:桑木野 幸司
出版社:白水社
以下のオンライン書店でご購入できます
「ルネサンス庭園の精神史  権力と知と美のメディア空間」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
河本 真理 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
芸術・娯楽関連記事
芸術・娯楽の関連記事をもっと見る >