光景 書評|川崎 祐(赤々舎)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月21日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

光景 書評
写真業界に地殻変動が
写真とSNSの親和力は高まるばかり

光景
著 者:川崎 祐
出版社:赤々舎
このエントリーをはてなブックマークに追加
光景(川崎 祐)赤々舎
光景
川崎 祐
赤々舎
  • オンライン書店で買う
写真といえばInstagramが連想されるほど、写真とSNSの親和力は高まるばかりだ。あるタレントの写真集のAmazonレビューに「公式Instagramの写真のほうが良い」という批判があり、職業的写真家とは何なのかと考えさせられた。写真業界に地殻変動が起き始めている。認めたくないかもしれないが。

一方で、芸術表現としての写真をどうアピールするかが模索されている。その舞台となっているのが写真祭だ。近年、世界的なブームになっていて、日本でも長い歴史を持つ北海道の東川町のほか、京都、東京、六甲山、屋久島で開催されており、昨年から札幌でHOKKAIDO PHOTO FESTA、今年から浅間国際写真フェスティバルが始まった。いずれも写真展示のほかトーク・イベントやポートフォリオ・レビューなど、作品鑑賞の手ほどきや、新たな作家の発掘の場になっている。HOKKAIDO PHOTO FESTAでは新人発掘のための賞を設け、今年は昨年度選ばれた佐藤弘康の写真集『EASTERN HOKKAIDO』が刊行された。酪農に取り組む人々を、一緒に働く立場から撮影したシリアスな作品だ。

写真集は国際的な評価の対象にもなっている。フランスの権威ある写真賞、ナダール賞を梶岡美穂の「So it goes」が受賞した。優れた写真集に贈られるもので日本人初となる快挙だ。現物は見ていないが、ネットで見る限り、幾重にもイメージが重ねられた繊細な作品のようだ。国際的な栄誉としては、森山大道がハッセルブラッド国際写真賞を受賞した。濱谷浩、杉本博司、石内都に次ぐ四人目となる。

須田一政、ロバート・フランクの訃報は、ともに巨星墜つの感があった。須田は直感的なスナップショットで、日常に異界の扉を開ける天才的な写真家。晩年は写真集作りに力を入れ、今年も『煙突のある風景』『Gankotoshi』が刊行された。どちらもこれまで撮影した作品をもとに編集したもので、時間とともに写真が「発酵」したと感じる。

ロバート・フランクは写真集の歴史を変えたともいわれる傑作『アメリカンズ』で知られる。社会と時代を捉える大きな物語の中に、私的なスナップ(小さな物語)を埋め込む編集方法は画期的で、日本の写真家にも大きな影響を与えた。晩年はやはり写真集作りに打ち込み、今年の四月に刊行された『Good days quiet』もまた過去の写真を通して読者と親密な関係をつくる写真集だった。フランクは『アメリカンズ』の後に一度は写真から離れ、戻ってきてからは「編集」を主な仕事とした。写真には過去しか写っていない。しかし、編集することで新たな意味を与えられ、読者の視線にさらすことでよみがえる。

日々世界で撮影されている写真は膨大な量に上る。Instagramにアップされた写真もやがてはデジタルの海の中で「詠み人知らず」の一枚になっていくだろう。だが、写真家には写真を「残す」責任がある。その点で、川崎祐の『光景』(赤々舎)はのちに貴重な写真集になりうる。写っているのは地方の家庭。二〇一〇年代という時代の「痛み」がそこにある。
この記事の中でご紹介した本
光景/赤々舎
光景
著 者:川崎 祐
出版社:赤々舎
「光景」は以下からご購入できます
「光景」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
タカザワケンジ 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
芸術・娯楽 > 写真関連記事
写真の関連記事をもっと見る >