演出家 鈴木忠志 その思想と作品 書評|渡辺 保( 岩波書店 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月21日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

演出家 鈴木忠志 その思想と作品 書評
今年の動向は落ち着き気味に
そのなかでも重要な本は確実にあった

演出家 鈴木忠志 その思想と作品
著 者:渡辺 保
出版社: 岩波書店
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 偶然だろうが、昨年の大著の出版ラッシュを思えば、今年の動向は落ち着いていた。もちろん、そのなかでも重要な演劇書は確実にあった。現代演劇の評論では、渡辺保『演出家鈴木忠志 その思想と作品』(岩波書店)を挙げたい。1960年代後半、著者がはじめて鈴木忠志の舞台を見てから最新作の「津軽海峡冬景色」まで、およそ50年のあいだに上演された鈴木忠志の代表的作品の舞台評が書かれる。演出家、評論家という違いはあれど、ともに時代を超えて第一線を並走してきた関係だからこそ描けたものだろう。

今年惜しまれつつ亡くなった舞台美術家、島次郎の作品集『舞台美術 1986-2018』(制作:朝日新聞出版/販売:紀伊國屋書店)は、日本の演劇界に大きな足跡を残した、彼の舞台美術が精選して収録される。その舞台美術はシンプルであるが、そこに俳優の身体が置かれたとき、空間との調和とともに、静謐な存在感を醸し出した。

昨今は実務的な演技術やワークショップ関係の本が多いが、俳優の思想とでもいうべきものに、笈田ヨシ『見えない俳優』(五柳書院)がある。すでにさまざまな言語で出版されているが、ようやく日本語版も出版された。パフォーマーの身体性を扱った山縣太一他『身体と言葉』(新曜社)は、独自の身体メソッドを自身の身体を通して構築しようと試みた。またダンスでは、中島那奈子他編著『老いと踊り』(勁草書房)も、「若さと踊り」という西洋のダンスのイメージに向こうを張る、評論や翻訳が収録された。老いと踊りについて書かれる論が主だが、なかにはそのイシューすら解体する國吉和子の論など興味深い。三浦基『やっぱり悲劇だった』(岩波書店)は、正統派の演劇論。なかなか演劇論を言葉として残す人がいない現状では貴重だ。寺尾格『ドイツ演劇クロニクル』(彩流社)は、20年分のドイツ演劇の状況を毎年記した。ドイツ演劇の傾向が総覧できるのは便利だ。

岸田戯曲賞受賞の松原俊太郎『山山』(白水社)。劇作と演出を兼ねず、劇作家だけで活動をする若手は昨今あまり見当たらないなかで、彼の存在は再び劇作家の時代をもたらすかもしれない。蜷川幸雄、藤田貴大著『蜷川幸雄と「蜷の綿」』(河出書房新社)は、蜷川幸雄をモチーフに描いた藤田の戯曲「蜷の綿」が収録される。インタビューや往復書簡も含まれる厚いものだが、インタビュー自体はお伺いをしている感はぬぐえない。

ドラマとして物語と筋が明確にある戯曲には、古川健『治天ノ君/追憶のアリラン』(早川書房)がある。今年、大作を上演して華々しく活動した谷賢一は、戯曲出版にかんしても旺盛だった。『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』(工作舎)と『戯曲福島三部作』(而立書房)。内容はどちらもオーソドクッスなドラマだが、世間の注目を得ようとする企画力がある。渡辺えり『月にぬれた手/天使猫』(早川書房)、永井愛『ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ』(而立書房)は、80年代より演劇界を牽引する二人の作家の戯曲。「女性」と区分けする必要もないが、なかなか中堅や若手の女性劇作家の本が出版されない状況のなかで奮闘している。翻訳では、異色作といえる、テネシー・ウィリアムズ著、広田敦郎訳『西洋能 男が死ぬ日』(而立書房)があった。
この記事の中でご紹介した本
演出家 鈴木忠志 その思想と作品/ 岩波書店
演出家 鈴木忠志 その思想と作品
著 者:渡辺 保
出版社: 岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「演出家 鈴木忠志 その思想と作品」出版社のホームページはこちら
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