元素単―13ヵ国語の周期表から解き明かす 書評|岩村 秀(エヌ・ティー・エス)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月21日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

元素単―13ヵ国語の周期表から解き明かす 書評
深刻な危機に瀕した日本の科学
社会全体で科学技術を見る視点を

元素単―13ヵ国語の周期表から解き明かす
著 者:原島 広至
監修者:岩村 秀
出版社:エヌ・ティー・エス
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本年はメンデレーエフが元素の周期律を発見して一五〇年であり、ユネスコにより「国際周期表年」とされ、日本でもさまざまな行事が行われた。岩村秀他『元素単』(エヌ・ティー・エス)は、周期表にまつわる様々なトピックをとりあげ、一三か国語の周期表の比較を行っている。三年前に一一三番元素として登録された日本発の元素名「ニホニウム」(Nh)も載っている。千葉県に由来する地質年代名称「チバニアン」は一一月に三次審査を通過した。また本年もノーベル賞受賞者が出たが、西暦二〇〇〇年以降多くの日本人受賞者がいる。以上のようなことは日本が国際的な科学の世界の先端にある印象を与える。

しかし、近年の日本人ノーベル賞の多くは数十年前の若い時期の研究に対するものであり、現実には日本の科学は深刻な危機状態にある。毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』(毎日新聞出版)は、現在の日本は予算額でも論文数でも国際競争に敗退しつつあると指摘している。岩本宣明『科学者が消える ノーベル賞が取れなくなる日本』(東洋経済新報社)は、日本の研究力が主要国で最低レベルに落ちてきており、若手の研究者志望も減ってきているなどの状況を明らかにいる。豊田長康『科学立国の危機 失速する日本の研究力』(同)は、詳細な数値データの分析にもとづいて競争力低下の実態を明らかにし、イノベーションや経済成長のために科学予算を増やす必要があるとし、日本の衰退をもたらしたのは「選択と集中」などを進めてきたこれまでの科学政策の誤りにあると批判している。

ただし「科学予算の増額」や「国際競争に伍していくイノベーション」という視点だけでなく、科学技術を社会全体の中で見ていく視点も重要である。池内了『科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか』(みすず書房)は、防衛省の委託研究やAI兵器などの問題にそくして倫理問題を議論する。齋藤了文『事故の哲学 ソーシャル・アクシデントと技術倫理』(講談社)は、自動運転車事故の責任など現在進行中の問題を技術倫理の観点から解明している。山口富子他編『予測がつくる社会 「科学の言葉」の使われ方』(東京大学出版会)は、近年さまざまな場面で重視される科学的予測の社会的意味を検討する。

そしてさらに「何のための科学」の問いも必要であろう。批判的科学論の旗手であり、三年前に亡くなった金森修氏は、その没後も生前の指示に基づいて数冊の書物が刊行されたが、小松美彦他編『東洋/西洋を越境する 金森修科学論翻訳集』(読書人)は、そうした指示による最後の刊行書である。外国語で発表されたものを翻訳したもので、詳細な全著作・論文目録が付されており、金森科学論の全貌を知ることができる。

科学史関係では、化学史学会編『化学史への招待』(オーム社)が実験装置やジェンダーなど近年の科学論の視点もとり入れて化学史のスタンダードを提示する。坂野徹『島の科学者 パラオ熱帯生物研究所と帝国日本の南洋研究』(勁草書房)は、日本統治下の太平洋諸島における調査研究と現地住民の関係を解明している。石川裕二『哺乳類の卵 発生学の父、フォン・ベーアの生涯』(工作舎)は、二〇〇年ほど前にはじめて哺乳類の卵を発見し、現在の再生医療などの出発点をつくった科学者の生涯を描く。
この記事の中でご紹介した本
元素単―13ヵ国語の周期表から解き明かす/エヌ・ティー・エス
元素単―13ヵ国語の周期表から解き明かす
著 者:原島 広至
監修者:岩村 秀
出版社:エヌ・ティー・エス
以下のオンライン書店でご購入できます
「元素単―13ヵ国語の周期表から解き明かす」出版社のホームページはこちら
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