戦国合戦〈大敗〉の歴史学 書評|黒嶋 敏(山川出版社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月26日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

戦国合戦〈大敗〉の歴史学 書評
研究視角も様々
本年は戦国期の成果報告が多かった

戦国合戦〈大敗〉の歴史学
編集者:黒嶋 敏
出版社:山川出版社
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本年は、とくに戦国期の成果報告が多かった。その研究視角も様々で、合戦そのものに焦点を当てて、その後の影響を考察した黒嶋敏『戦国合戦〈大敗〉の歴史学』(山川出版社)、当時の中核都市大坂の構造や特質に考古史料なども用いて迫った大澤研一『大坂の都市史的研究』(思文閣出版)、研究の厚い織田政権論に取り組んだ久野雅司『織田信長政権の権力構造』(戎光祥出版)などがあげられる。

また、甲斐武田氏やその所領経営を素材としたものに小笠原春香『戦国大名武田氏の外交と戦争』(岩田書院)・萩原三雄『戦国期城郭と考古学』(同)・柴辻俊六『戦国期武田氏領の研究』(勉誠出版)、宗教史の立場からは高橋裕史『戦国日本のキリシタン布教論争』(同)・河内将芳『戦国仏教と京都』(法藏館)・安藤弥『戦国期宗教勢力史論』(同)などの多様な成果があり、内外流通論の視点からは鹿毛敏夫『戦国大名の海外交易』(勉誠出版)・野澤隆一『戦国期の伝馬制度と負担体系』(岩田書院)などがあったほか、中世前期でも中世都市研究会『港津と権力』(山川出版社)があった。流通論を考えるうえで、流通するモノへの視点も重要であることはいうまでもないが、村木二郎『中世のモノづくり』(朝倉書店)はそうしたモノを作り出す技術史に迫る。

なお、矢田俊文『戦国期文書論』(高志書院)は、書名から難解な文書論が展開されているような印象を持つが、多彩な執筆陣による全国の具体的な文書を素材とした論文集で、史料を読むうえでの入門書的な役割も果たしている。文書論については、中世前期でも佐藤秀成『鎌倉幕府文書行政論』(吉川弘文館)や北条氏研究会『北条氏発給文書の研究』(勉誠出版)などの成果があった。

中世前期研究では、昨年に引き続き地域社会への視線が維持された。たとえば海老澤衷『よみがえる荘園』(勉誠出版)・大利恵子『摂関家領土佐国幡多荘再考』(清文堂出版)・佐伯徳哉『権門体制下の出雲と荘園支配』(同成社)などがあげられるように、より具体的な対象に対して研究が進んだといえるだろう。また窪田涼子『中世在地社会の共有財と寺社』(同)は、人々の日々の営みに深く関わる在地寺社に集まる「財」を考察の中心として、その社会を明らかにしようとしたものであり、中世の在地社会研究に新たな切り口を提示した成果といえる。

その他、一族研究には中根正人『常陸大掾氏と中世後期の東国』(岩田書院)や谷口雄太『中世足利氏の血統と権威』(吉川弘文館)などがあり、中世前期の朝廷と幕府の、有力寺社への対処法を考察した稲葉伸道『日本中世の王朝・幕府と寺社』(同)、鎌倉幕府成立の前提を再考しようとする川合康『院政期武士社会と鎌倉幕府』(同)、昨年来、日本史の重要な転換点としてあらためて注目されている「承久の乱」を対象とした野口実『承久の乱の構造と展開』(戎光祥出版)、予言書として知られる「聖徳太子未来記」「野馬台詩」がどのように生成・受容されたのかについて検討する小峯和明『予言文学の語る中世』(吉川弘文館)など、実に多様な成果が蓄積された。(さくらい・よしお=宮内庁書陵部図書課主任研究官・日本中世史)
この記事の中でご紹介した本
戦国合戦〈大敗〉の歴史学/山川出版社
戦国合戦〈大敗〉の歴史学
編集者:黒嶋 敏
出版社:山川出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
「戦国合戦〈大敗〉の歴史学」出版社のホームページはこちら
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