安倍政治 100のファクトチェック 書評|望月 衣塑子(集英社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月26日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

安倍政治 100のファクトチェック 書評
「一億総メディア化現象」、どう対峙すべきか
現代ジャーナリズムの危機とメディアの存在意義の問い直し

安倍政治 100のファクトチェック
著 者:望月 衣塑子、南 彰
出版社:集英社
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令和を迎えた今年、皮肉にも春の「桜を見る会」が散るような政治状況で年を終えようとしている。

南彰・望月衣塑子『安倍政治100のファクトチェック』(集英社新書)、南彰『報道事変』(朝日新書)、望月衣塑子・前川喜平・マーティン・ファクラー『同調圧力』(角川新書)は、ますます高まる長期政権の劣化とジャーナリズム機能の低下に警鐘を鳴らしていることが容易に読み取れる。

それは主としてSNSでフェイク、フェイクニュースが「拡散」するから生じる現代社会の混沌さ(病)でもあろう。飯塚恵子『ドキュメント誘導工作』(中公新書ラクレ)は国際政治の観点から、今日の世界の変動を「すぐそばに迫る危機」(自分の意見が知らずに誰かに操られている)だという。

フェイクや虚偽を流す権力者は対峙する相手方を「フェイク」「印象操作」というワードで一方的に片づけようとする。「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」(公文書等の管理に関する法律第一条)である「公文書」一つとっても、国家権力がその場しのぎに都合の良い解釈で終わらせようとしている。そうした病を前に、古賀純一郎『すべてを疑え!』(旬報社)、松本一弥『ディープフェイクと闘う』(朝日新聞出版)、立岩陽一郎『ファクトチェック最前線』(あけび書房)は一読する価値がある。

にしても、現代ジャーナリズムがここまで危機に陥る過程を知ることは見逃してはならない。

佐藤卓己『流言のメディア史』(岩波新書)はうわさやデマを、長い射程からプロパガンダ、世論、大衆文化としてとらえている。「ポスト真実」の時代のメディアリテラシーの本質は「あいまいな情報に耐える力」と説く。他方、佐藤卓己・川崎吉紀編『近代日本のメディア議員』(創元社)を読むと、戦前戦後新聞(放送)出身者がいかに多く国会議員になっていたものの、国家が誤った道を歩むことを止めることができなかった(できない)ことは何を示唆しているか。

それは、下山進『2050年のメディア』(文藝春秋)や成毛眞『世界最先端の戦略がわかるamazon』(ダイヤモンド社)を読むまでもなく、デジタルメディア社会へ急加速する裏に、権力の中心に食い込み利権をむさぼる構造の様が浮かび上がる。

阪本博志『大宅壮一の「戦後」』(人文書院)や根津朝彦『戦後日本ジャーナリズムの思想』(東京大学出版会)、そして外務省機密漏えい事件を暴いた西山太吉『記者と国家』(岩波書店)などからは、ジャーナリズム活動が戦後日本社会でどのような働きをしてきたかをもう一度問い直すことができる。黒崎正己『新聞記者・桐生悠々 忖度ニッポンを「嗤う」』(現代書館)や斎藤貴男『「明治礼賛」の正体』(岩波ブックレット)も、ジャーナリズム、メディアの存在意味を改めて問い直す刺激剤となるだろう。

最後に二冊の研究書をあげる。

大井眞二『ジャーナリズム・スタディーズのフィールド』(学文社)はメディアの自由論、比較ジャーナリズム、客観性、倫理、グローバル化といった今後ジャーナリズム研究を向上させる上で重要な様々なフィールドについて検討している。とくに、ジャーナリズムがメディア化(プロフェッショナル化・商業化・技術の変化)する中で変容し信頼が揺らぎつつある現状に対しては、メディアの説明責任を報道内容だけでなくコミュニケーション過程全般に関わるものと広く捉え、透明性や双方向性について分析することの必要性を訴えている。

脇浜紀子・菅谷実(編著)『メディア・ローカリズム』(中央経済社)は副題に「地域ニュース・地域情報をどう支えるか」とあるように、デジタル化する社会で動画配信サービス、収益性の高い娯楽コンテンツが「拡散」するなか、メディアの公共的機能の在り方、メディア・ローカリズムを国内外からの視点で問うている。

大宅がテレビ放送の出現時に言った「一億総白痴化」は過去のものなのか。いや「一億総メディア化現象」に我々はどう対峙すべきかが突きつけられている。(すずき・ゆうが=上智大学教授・新聞学)
この記事の中でご紹介した本
安倍政治 100のファクトチェック/集英社
安倍政治 100のファクトチェック
著 者:望月 衣塑子、南 彰
出版社:集英社
「安倍政治 100のファクトチェック」は以下からご購入できます
「安倍政治 100のファクトチェック」出版社のホームページはこちら
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