明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち 書評|アラン・グラッツ(福音館書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月27日 / 新聞掲載日:2019年12月20日(第3320号)

明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち 書評
子どもは大人中心社会のマイノリティ
マイノリティの心を掬いとる作品、問いをつきつけ、 考えを促す作品、前へ進み続けることの大切さ

明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち
著 者:アラン・グラッツ
出版社:福音館書店
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子どもは大人中心の社会において、いつもマイノリティ。それだけに、児童文学にはマイノリティの心を掬いとった読み応えのある作品が多い。『明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち』(アラン・グラッツ作、さくまゆみこ訳、福音館書店)は、1938年ベルリンから逃げるユダヤ人のヨーゼフ、1994年キューバからアメリカに入国しようとするイサベル、2015年シリアからドイツを目指すマフムードの3人と家族の様子を描いた作品。3つの時代が重ねられることで「人間とは何か」「歴史から何を学ぶべきか」という問いが読者に突き付けられる。難民を描いた作品は、絵本『ルブナとこいし』(ウェンディ・メデュワ文、ダニエル・イヌュ絵、木坂涼訳、BL出版)、アフガニスタンから来た少年の物語『11番目の取引』(アリッサ・ホリングスワース作、もりうちすみこ訳、鈴木出版)も出版された。そんな中で、スペインの『民主主義は誰のもの?』をはじめとするシリーズ「あしたのための本」(プランテルグループ文、宇野和美訳、あかね書房)は、ユニークな絵とわかりやすい言葉で社会と政治について読者に考えを促す。

父が刑務所に入っているアメリカのスラムの少年を描いた『ゴースト』(ジェイソン・レノルズ作、ないとうふみこ訳、小峰書店)、おじさんが自殺した悲しみから抜けられないイスラエルの少年を描いた『アンチ』(ヨナタン・ヤヴィン作、鴨志田聡子訳、岩波書店)は、陸上(前者)、ラップ(後者)によって生き延びる。チリの世界的詩人であるパブロ・ネルーダの子ども時代を描いた『夢見る人』(パム・ムニョス・ライアン作、ピーター・シス絵、原田勝訳、岩波書店)も言葉の力で強圧的な父から自立する姿が描かれている。

日本の作品でも『きみの存在を意識する』(梨屋アリエ作、ポプラ社)は、読字障害や摂食障害、性認識や養子であることなどの問題を抱える中学2年生の男女が悩む姿を描き、『ぼくは本を読んでいる。』(ひこ・田中著、講談社)は小学5年生の少年が『赤毛のアン』などを読む過程が描かれている。『徳治郎とボク』(花形みつる著・装画、理論社)は、子ども同様、社会のマイノリティとも言える祖父の死にざまをボクが回想する作品。気が短くて怒鳴る祖父の人間味あふれる姿が人間の尊厳について考えさせる。紙芝居『ちっちゃいこえ』(アーサー・ビナード脚本、丸木俊・丸木位里絵、童心社)は、「原爆の図」を再構成して細胞も動物も破壊した原爆の恐ろしさを静かに訴えた。

『ほうさんちゅう ちいさなふしぎな生きもののかたち』(松岡篤監修、かんちくたかこ文、アリス館)、『ナマコ天国』(本川達雄作、こしだミカ絵、 偕成社)は、あまり知られていない生物を丁寧に紹介したノンフィクション作品であった。

そんな中で『なっちゃんのなつ』(伊藤比呂美文、片山健絵、福音館書店)は、自然の中に身を置いて感覚を研ぎ澄ませて自らを見つめる大切さを描き、『ヒキガエルがいく』(パク・ジォンチェ作、申明浩訳、広松由希子訳、岩波書店)は、前へ進み続けることの大切さを教えてくれる絵本であった。(どい・やすこ=大阪国際児童文学振興財団理事・総括専門員)
この記事の中でご紹介した本
明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち/福音館書店
明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち
著 者:アラン・グラッツ
出版社:福音館書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち」出版社のホームページはこちら
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