虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか / 47(平凡社)彼らの「心の闇」とは何か  少年たちが経験してきたことは社会の闇そのもの|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年1月2日 / 新聞掲載日:2020年1月3日(第3321号)

彼らの「心の闇」とは何か
少年たちが経験してきたことは社会の闇そのもの

虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか
著 者:石井 光太
出版社:平凡社
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 少年の「心の闇」とは何だろう――。

これまで私は、川崎中一男子生徒殺害事件など複数の少年犯罪を取材し、ルポを書いてきた。常に感じるのは、なぜ少年たちはいとも簡単に凄惨な事件を起こすのかということだ。

メディアは少年事件を報じる時、決まって「心の闇」という言葉を出す。少年の心の闇が事件を引き起こしたのだ、と。

だが、これは言い得ているようで、何も意味していない。

もし少年が事件を起こした理由を理解しようとすれば、抽象的な言葉で濁すのではなく、闇に光を当ててそこにあるものを明らかにしなければならない。

今回このルポルタージュで行ったのは、まさにそうした取り組みだった。日本全国の少年院をはじめとした更生施設を巡り、実際に事件を起こした少年や、それを取り巻く人々に話を聞き、彼らが抱えている問題を一つひとつ見つめていったのである。

大半の少年に共通したのが、劣悪な家庭環境で生まれ育ったことだ。九割前後の人々が明らかに悪い環境で育ち、七割くらいが虐待を受けていた。

しかし、家庭環境が悪かったからといって、すべての少年が事件を起こすわけではない。起こす少年と起こさない少年とでは何が違うのか。さらに踏み込むと、少年たちが元々発達障害や知的障害を抱えていて、そこに虐待が加わることでより複雑な問題を抱えてしまうようになるケースや、いじめや差別から複数の精神疾患を病んだケース、あるいは性的被害を受けた経験から自傷やドラッグに走って道徳観を失っていくケースなどがあった。家庭環境だけが原因ではなく、少年が持っているものが虐待によってねじれたり、二次障害が引き起こされたりすることで、自分ではどうにもできない状況に陥り、もがき苦しむ中で犯罪を起こすことがほとんどなのだ。

詳細は本書に譲るが、少年院で話を聞いて印象的だったのが、犯罪を起こした少年たちが思い出したくもない過去を驚くほど素直に打ち明けてくれたことだ。親からの暴力、障害による苦悩、親から受けた性的虐待、レイプ被害経験、家族との死別経験、それに自傷行為……。

彼らは自分のつらい過去を聞いてくれる大人に出会ったことがないのだろう。だからこそ、そういう人間が現れた途端に、「わかってもらいたい」「何かに役立ててもらいたい」と思って語りはじめる。逆に言えば、それだけ社会は彼らに無関心を貫いているのである。

凄惨な事件が起きた時、それを「心の闇」と言ってわかった気になってしまうことが正しいのだろうか。少年たちが経験してきたことは社会の闇そのものだ。知りたくもないことが山ほどある。だが、その言葉にこそ耳を傾け、横たわっている大きな社会課題を見つけ、解決に取り組んでいくことが、私たち大人の役割ではないだろうか。(いしい・こうた=作家)(三九二頁・九八〇円・平凡社)
この記事の中でご紹介した本
虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか/平凡社
虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか
著 者:石井 光太
出版社:平凡社
「虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか」は以下からご購入できます
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