住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー 書評|小沢 明(左右社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月28日 / 新聞掲載日:2020年1月3日(第3321号)

住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー 書評
都市型住宅の新たな構築の時代へ
都市と住まいの関係を再確認するために

住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー
著 者:小沢 明
出版社:左右社
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 いまだ、東京でマンションや事務所ビルの合間に、忽然と庭付きの戸建住宅が建つ不思議な風景を見ることがある。かつては周辺が住宅地で、庭付きの高くてもせいぜい2階建てくらいの住宅が並んでいたことを連想させるし、塀の上に少しだけ顔を出している庭木の緑が人工物の冷たさの中で、ホット一息、気持ちを和らげてもくれる。

東京や大都市では経済性や技術力もあって高密度集合住宅が都市型住宅として定着し、都心部や再開発地域では現在でも盛んに超高層マンションの建設が展開されている。ただ、こうした高層型の都市型住宅が建築分野を中心に社会学や医学の分野では必ずしも肯定的に評価されているわけではない。たとえば、こうした超高層の住まいの子育てに関して、つい外出が面倒になり幼い子供の外遊びの習慣や子供同士の交流が偏るなど、子供の成長に様々な影響を与えているといったことも指摘されて久しい。

また、建築は、個人のものでありながらも、建設されると景観の一部と化して公的(都市的)なものともなるという両義性を備えた厄介な存在でもある。そのため、既存の公的部分とどのように共存し、私的部分と融合化させるのかという重要な命題が存在している。ただ、これまでの建築はこうした側面に無頓着で、わが国の都市型住宅の多くは内部に開き、公的なものに対して閉じることに終始してきたように思う。近年の超高層マンションの多くは、そこに住む人々の共有施設を内包しているが、ここでいう公的なものとは明らかに異なるもので、やはり都市に対して閉じている。

その意味では、経済合理性という名のもとで高層、あるいは、超高層マンションが建設され続けているものの、都市型住宅の在り様は、いまだ大きな未解決の課題でもあるのだ。本書の目的は、おそらく、こうした問題を抱えた住まいの在り様を、少子高齢化という社会状況の変化の中で、改めて問い直す試みともいえるだろう。

ここで著者は、そうした都市型住宅の問い直しの方法として、近代建築の巨匠として知られるル・コルビュジュエが十代に手掛けた初期の住宅、および、彼の最も著名な住宅のサヴォア邸、ルードリッヒ大公の手掛けた芸術家村、パリの建築家マレ・スティヴァンのパリ市内に手掛けた住宅、そして、槇文彦の手掛けた代官山のヒルサイドテラスを取り上げている。この取り上げた作品からだけでも、筆者がめざしている〝アーバン・ヴィラ〟と呼ぶ都市型住宅が個人住居や住居と仕事場のコンプレックスといった低層の住まいであることは明らかだ。

さて、著者は、取り挙げた各作品の様々な試みをアーバン・ヴィラの観点から分析し、求められるべき都市型住宅について語っている。その解説は、一見すると説明的な部分が多く、これまで語られてきたものと同じように思われるかもしれないが、よく読むと都市と住まいの関係を見直した興味深い考察で、アーバン・ヴィラの街路と連続した関係性や、街路と繋がる空間と上階の生活空間とが同等に重要な空間として見る計画性、そのモデルとして代官山のヒルサイドテラスを取り上げているのである。

いずれにせよ、本書では「都市建築としての住戸」の源流として、古代ローマのドムス、中国の四合院住宅、京の町屋、ロンドンのジョージアンタウンハウス、そしてパリのメゾン・ア・ロアイエを挙げている。こうしたモデルを改めて訪れ、都市と住まいの関係を再確認したいという衝動に駆られる書物といえる。
この記事の中でご紹介した本
住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー/左右社
住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー
著 者:小沢 明
出版社:左右社
以下のオンライン書店でご購入できます
「住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー」出版社のホームページはこちら
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小沢 明
小沢 明(おざわあきら)建築家、東北芸術工科大学名誉教授。
1936年満州国大連生まれ。早稲田大学建築学科卒業、ハーバード大学大学院建築修士修了(1965)。米国セルト・ジャクソン建築設計事務所、槇総合計画事務所を経て、小沢明建築研究室を設立。工学院大学特別専任教授、ワシントン大学、キャンサス大学客員教授歴任。東北芸術工科大学教授、第三代学長を務める。 主な作品に、「第一回横浜国際アーバン・デザイン設計競技」最優秀賞、「日仏建築設計競技・PAN13バンリューを創る」優秀賞、「鶴岡アート・フォーラム」(BCS賞、公共建築賞、東北建築賞)、「金山町立明安小学校」(文部科学大臣奨励賞、東北建築賞、公共の色彩賞)のほか、「セント・メリーズロッジ」(日本建築家協会二十五年賞)受賞。 著書に『都市の住まいの二都物語』(王国社)、『「ポシェ」から「余白」へ 都市居住とアーバニズムの諸相を追って』(鹿島出版会)、『デザインの知』(共著、角川学芸出版社)、訳書にヴォルフ・フォン・エッカルト『どこに住むべきか』(共訳、彰国社)、ホイットニー・ノース・セイモアー『スモール・アーバンスペース』(彰国社)、ハワード・サールマン『パリ大改造 オースマンの業績』(井上書院)がある。
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