丸山眞男 インタビュー 丸山真男氏の思想と行動――5・19と知識人の「軌跡」 『週刊読書人』1960(昭和35)年9月19日号 1面掲載|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年12月29日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第342号)

丸山眞男 インタビュー
丸山真男氏の思想と行動――5・19と知識人の「軌跡」
『週刊読書人』1960(昭和35)年9月19日号 1面掲載

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1960(昭和35)年
9月19日号1面より
五・一九に象徴される一九六〇年・日本において、知識人は、それぞれに国民の一員として、ひろい戦線のなかで行動し、発言した。それは、思想史上の画期的な事件であるとともに、日本にきずかれてゆく思想史を解析するための数多くの手がかりをそのうちにふくんでいた。ある人は、思索の場から行動へとすすみ出た。また、ある人は、公的な位置を捨てることによって、状況にたいし自己を対置した。戦後思想史の決算であると同時に再出発の契機でもある緊迫した時期を、知識人の一人一人がみずからの責任をかけて通過した。しかし、その時期の時間密度があまりにも濃密であったため、ときに発言は論者の意図とはなれて解釈され、そのままに奇妙な論争がおこなわれている面がないでもない。思想にとって、必要なことは、過去の集約をいそぐことよりも、過去にふくまれる問題を現在からとらえ、未来に問いかけることであるだろう。そのためには、一人一人の知識人の「軌跡」を知って、時間をこえる思考の成果をさぐることが先決だろう。現代日本の代表的知識人とのインタヴューをこころみた意図は、ここにある。これらの人々の英知と勇気が、その根源において読者のためにも深い示唆と激励とをふくんでいるであろうことを、われわれは疑わない。(編集部)
第1回
実践禁欲論

――先生は、五月二四日、教育会館での知識人の集会において「戦後に……散発的に問題にされてきたことは、ここに一挙に凝集した」と講演なさいました(「選択のとき」『みすず』八月号所収)。これは五・一九の政治状況について妥当していただけでなく、日本の戦後思想に関してもかなりの程度まで言えることだと思います。そこで、言責ある先生を(笑)訪問の第一候補としたわけですが、先生は五・一九以前にすでに武蔵野市民集会で演壇に立たれ、二四日に学者代表として官邸にはいられたのちは主として東大で大学人の組織化に努められたと聞いています。これは、「実践禁欲」という評のある先生にしては異例な……。
丸山
 実践禁欲というのはどういう意味かな。もともと今度のような形で人の目に立つような「実践」は性に合わないし、それに肺切除の後は事実上、生理的に限界があったのでやらなかっただけのことで、とりわけ禁欲したつもりはありません。今度だって仕方なく動いたんです。ああいう形でない「実践」はこれまでも僕なりにして来たつもりですが……。
五月一五日に井の頭公園でやった市民集会は、竹内好さんから引張り出されて三月頃の準備会に顔を出したので、当日しゃべらざるをえないことになった。二四日の教育会館でのアピールも、東大政官集会での話も、だいたいほかの人の御膳立に従っただけです。もちろんそれ以後は文字通りヘトヘトになる日が連日続きましたし、自分として果すべき事はして来たつもりですが、そういう実感はむしろ、僕が個人的な責任でその都度とった小さな行動なり決断なりにまつわっているので、世間に知られているようなケースでは、本当のところ主動的というより従動的だった。大学内部の組織という点でも、僕なんかよりその面で努力した人は他にたくさんいます。今度あらためて切実に感じたが東京大学というのはおそろしく広いな。その中だけでも無数の火元があったんですね。
しかしともかく社会的活動に精を出したということでは、僕に関するかぎり、今回に比べられるのは敗戦直後だけです。四五年の秋に復員して間もなくもう亡くなった友人ですが木部達二君から相談を受けて三島に「庶民大学」というのを作り、ずっとそれに協力した。固定した地域で広い階層を集めた文化活動としては、あれはハシリじゃないかしら。木部君の組織論は今から考えても立派なものだった。清水さんや川島(武宜)さんも来てくれました。地元の米屋さんや三島の駅員などが学生と一緒に運営に参加しました。こんな昔話をしてもきりがないけれど……。
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