いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき 書評|松永 正訓(中央公論新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年12月28日 / 新聞掲載日:2020年1月3日(第3321号)

いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき 書評
命の重みを問いかけ続ける
小児外科医の目と耳と手を通して知り得た事実

いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき
著 者:松永 正訓
出版社:中央公論新社
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 元気で健康な子供を産み、育てたい。

その気持ちは、すべての親に共通する願いであろう。でも現実には、なんらかの病や障害をもって生まれてくる子供たちが、存在している。
著者の松永正訓さんは、小児外科医の視点から「わが子の障害を受け入れるとき」をテーマに本書を書き進めている。

腹壁破裂、食道閉鎖症、染色体異常、口唇口蓋裂……。本書に登場する子供たちはみな深刻な先天的奇形や疾患を抱えている。たとえ治療を施して一命を取りとめても、障害を抱えたまま生きていかなくてはいけない、という患児ばかりである。そうした中で著者は子供ひとりひとりと向き合い、家族の心に寄り添い、自分自身に命の重みを問いかけ続ける。

本書の最大の魅力は、小児外科医の著者だからこその視点だろう。著者の目と耳と手触りを通して知り得た事実が、丁寧な筆致で描かれる、その臨場感。まるで自分が重篤な症状の子供の手術に立ち合っているような。苦悩する家族を前に、言葉を選んでいるような。著者の体験がそのまま胸に迫ってくる。

著者が向き合ってきた家族の中には、子供が生まれた時点でその障害を受け入れ、覚悟を持って育てていく両親がいる。また、少しずつ、長い時間をかけてゆっくりと愛情を育み受け入れていく両親がいる。そして中には最後まで障害を受け入れることができず、「一生、病院で面倒をみてください」と背を向けて去っていく両親がいる。

両親が最後まで手術を拒否し、病棟で亡くなっていった赤ちゃんの話は、涙なくして読むことはできない。

その一方で生まれて間もない頃は息子の病を受け入れられず、「このまま生きていて幸せなんでしょうか」と著者に問いかけていた母親が、何十年の歳月をかけてわが子を受け入れていく話には温かな涙が溢れた。母親は毎年、三十年間にわたって、著者に息子の写真入りの年賀状を届けてくれるという。

テーマは重く深く、とても軽々しい気分で読めるものではない。でも強い気持ちでページを繰れるのは、著者の助けよう、助けたい、という思いが文章の一行一行に滲んでいるからだと思う。

本書は二〇一七年から二〇一九年にかけて読売新聞オンラインのヨミドクターに連載したものを大幅加筆、修正し、一冊にまとめたものである。連載当時の総PV(ページビュー=ウェブページ閲覧数)は、一億九〇〇万というから、その反響は語るまでもない。

どうすればわが子の障害を受け入れられるのか――。著者が出した答えは、本書に書き下ろした最終章「滑りやすい坂」に記されている。

一読が世界を変える、愛に溢れた一冊である。
この記事の中でご紹介した本
いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき/中央公論新社
いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき
著 者:松永 正訓
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき」出版社のホームページはこちら
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