乙女の密告 書評|赤染 晶子(新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2020年1月7日

「乙女」とは一体なんなのか

乙女の密告
著 者:赤染 晶子
出版社:新潮社
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乙女の密告(赤染 晶子)新潮社
乙女の密告
赤染 晶子
新潮社
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 今回は、第143回芥川賞を受賞した赤染晶子さんの『乙女の密告』を選んだ。

舞台は京都の外国語大学。この大学の〝乙女達〟は普通の女子大学生のように授業中の内職に化粧をしたり、携帯電話をいじったりはしない。予習が大変でそんな余裕がないからだ。

『アンネの日記』を題材にドイツ語を学んでいる最中、突然「乙女の皆さーん!」とドイツ語のスピーチゼミをしているバッハマン教授が乱入してくる。そこでスピーチコンテストに向けて教授の思う、アンネにとって最も大事な日、1944年4月9日の夜の暗唱をすることになり、難しい発音や表現の多いドイツ語に乙女達は苦戦をする。

ある日、事件が起こる。乙女達の中には、〝黒ばら組〟と〝すみれ組〟という二つの派閥があるのだが、その一つ〝黒ばら組〟のトップであり、全国のスピーチコンテストで常に上位にいる麗子様が教授にスピーチの原稿を作ってもらっているのではないか、という噂が流れ、派閥から追放されてしまう。さらに、教授の恋人のような存在である〝アンゲリカ人形〟が誘拐されてしまい……、乙女達のスピーチコンテストは果たして成功するのだろうか。

「乙女」とはいったい何なのだろうか? 『乙女の密告』を初めて目にした時、真っ先に思い浮かんだ疑問だ。この物語の中でその答えが明らかになる。「乙女とは。信じられないと驚いて誰よりもそれを深く信じる生き物」「潔癖な生き物」「トイレさえ群れを成していく生き物」「乙女とは夢見る存在」「決して真実を語らない」「美しいメタファーを愛する」と本書では乙女について書かれている。どれも共感できる。私は普段、女の子らしい可愛い仕草とか、趣味を「乙女」と感じることが多いが、共感できるということは「乙女=少女」の事を言うのだろうか。そうだとしたら少女が〝一番女の子らしい時期〟ということになる。

主人公は乙女にとっては禁断の果実であるある事件の真実を知ってしまう。真実を知った瞬間、主人公は乙女ではなくなってしまった。「乙女=少女」ならば、乙女ではない=少女ではない=大人になった。ということを意味しているのだろうか。

読んで印象深いのは関西弁のリズムのある文章だ。短い文が連続していて、ボケとツッコミのようなリズムが見える。また、〝アンゲリカ人形〟に異形な愛を注ぐバッハマン教授や、「おほほほほ」と笑う麗子様など登場人物がちょっと可笑しい人ばかりで面白い。「おえー、おえー、」と乙女たちがドイツ語の発音を何度も練習するシーンにはクスっと笑ってしまった。面白いだけではない、名言もたくさん出てくる。私が一番記憶に残った言葉は、主人公がスピーチの言葉を忘れてしまった時に麗子が放った「スピーチでは自分の一番大事な言葉に出会えるねん。」「その言葉はみか子の一生の宝物やよ。」という言葉だ。人前でミスをするのが怖くて、なかなか表に出ようとしない自分について考えさせられ、また文を書く上で言葉は大切だと改めて教えてくれた。

面白くてスラスラと読めてしまう、そして読めば読むほどハマっていく。なにより『アンネの日記』を読みたくなる一冊だった。
渡辺小春
自然のなかって気持ちいい!
この記事の中でご紹介した本
乙女の密告/新潮社
乙女の密告
著 者:赤染 晶子
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
「乙女の密告」出版社のホームページはこちら
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