東大闘争から五〇年 歴史の証言 書評|東大闘争・確認書五〇年編集委員会( 花伝社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年1月11日 / 新聞掲載日:2020年1月10日(第3322号)

東大闘争から五〇年 歴史の証言 書評
記憶を継承し、いまを生きるために
半世紀前の社会運動の当事者の声を聞く

東大闘争から五〇年 歴史の証言
著 者:東大闘争・確認書五〇年編集委員会
出版社: 花伝社
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 これまで、一九六八〜一九六九年に全国的に多発した大学闘争について語られるときは、ともすると全共闘運動にのみ焦点が定められがちだった。これにたいし本書は、東京大学で発生した大学闘争で、全共闘運動と敵対した、日本共産党・民主青年同盟系の学生たちやかれらを支持した学生たちによる寄稿を中心に編まれている。その意味で貴重な一冊である。

書名からわかるのは、大学闘争の主役とはなかなか見なされてこなかった、こうした立場の学生たちにとっても、東大闘争は、第三者的な「紛争」より「闘争」という表現がふさわしいものであり、かれらもまた、闘いの渦の中にその身を投げ入れて、なにかを得ようと格闘したということだ。
 では、東大闘争でかれらはなにを獲得しようとしたのか。東大闘争が本格的に始まったのは、一九六八年六月である。欠陥の多い卒業後研修制度の改善などを求めてストライキ中だった医学部生たちが、安田講堂を占拠したのにたいし、東大執行部が機動隊を導入した。東大生は猛烈に反発し、これ以降、全学的に無期限の授業ストライキや建物占拠などを展開していく。しかし、闘争が長期化するなかで、日本共産党系の学生たちは、ストライキ続行から具体的な成果を得たうえでの闘争終結へと、方針を転換していった。そして一九六九年一月一〇日、かれらが主導して結成した学生代表団と東大執行部とのあいだで、「10項目の確認書」が取り交わされた。

東大全共闘派の学生たちは確認書による闘争終結には納得せず、安田講堂などの占拠を続けたが、一九六九年一月一八日・一九日のいわゆる安田講堂事件でキャンパスから排除されるに至った。
 10項目の確認書締結から五〇年後の二〇一九年一月一〇日、東大の山上会館で集会「東大闘争・確認書五〇年」が開かれ、参加者に本書への寄稿が呼びかけられた。ここからもわかるように、本書は基本的には、確認書を肯定的に記念する立場をとる。とくに確認書のなかで、学生が固有の権利を有して大学の自治に参画していることが明記され、学生運動を規制していた学生処分制度が再検討にふされたことが、闘争の成果として位置づけられている。
 しかし、本書に寄せられた手記の内容やそれぞれの確認書にたいする温度が実に多様であることも、確かである。ここから、大学闘争の時代から半世紀以上が経過したいま、社会運動の記憶を継承していくさいの重い問いが浮かび上がる。

一方で、東大全共闘の暴力性や無計画性を強く非難し、東大闘争での敵対関係をそのまま再現するかのような寄稿がある。他方で、自分たちの暴力性も認め、確認書が学生たちの問題意識を十分に受けとめていたか、確認書によって東大は本当に良くなったのかと振り返る手記もある。いまを生きるために、過去の社会運動の当事者から、どのような声を聞きたいか。本書を読むことは、このような問いを考えることにつながるはずだ。
この記事の中でご紹介した本
東大闘争から五〇年 歴史の証言/ 花伝社
東大闘争から五〇年 歴史の証言
著 者:東大闘争・確認書五〇年編集委員会
出版社: 花伝社
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