風邪の効用 書評|野口 晴哉(筑摩書房 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年1月17日 / 新聞掲載日:2020年1月10日(第3322号)

風邪の効用

風邪の効用
著 者:野口 晴哉
出版社:筑摩書房 
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風邪の効用(野口 晴哉)筑摩書房 
風邪の効用
野口 晴哉
筑摩書房 
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今年の冬は風邪を引かなかった。喜ぶべきことなのに少し残念なのは,風邪の効用を体感できなかったからである。
「風邪を引くと大抵体が整う」(p.18)「風邪というものは治療するのではなくて,経過するものでなくてはならない。」(p.27)と語る著者は,整体協会の創設者にして整体の発展に寄与した人物。本書は,自らの治療経験から見いだした風邪のとらえ方・対処法についての講義をまとめたもので,1962年に全生社から出版され,再構成してちくま文庫になった。

いわば「古典」であるにもかかわらず,広く読み継がれているのは,積み重ねた経験から導かれた方法=実用と,その先にある普遍的な思想が現代人に響くからにほかならない。

著者は,決して風邪を軽く見ているわけではない。むしろ,別の病につながる難しさを知るからこそ,体をよく知り,正しく経過させることを目指す。私たちの「常識」である,仕事や用事のために早く治すという考えの方が,風邪を侮り,本来の健康を損なう原因になっているのではなかろうか。何事も,今起きている現象に対処するだけでなく,原因や背景を受け止めなくては始まらない。もし,風邪を引いてしまったら体のゆがみが原因かそれとも心理的な原因なのか,自分の体の声に耳を傾け,体を整える機会ととらえたい。

文学作品の中で,印象深い風邪の場面がある。昨年,大きなブームになった『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著 岩波文庫 1982)がそれだ。主人公のコペル君が,深い後悔を抱えて雪の中に立ち尽くし,ひどい風邪を引く。長い間寝込むが,回復した後はすっきり晴れ晴れとした心持ちになる。

これぞ, 正しく経過して「蛇が皮をぬいだよう」にすっきりした風邪の効用ではないかと思う。
この記事の中でご紹介した本
風邪の効用/筑摩書房 
風邪の効用
著 者:野口 晴哉
出版社:筑摩書房 
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