「ルー・カリブー:平日は ママと、週末はパパと」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

American Picture Book Review
更新日:2020年1月13日 / 新聞掲載日:2020年1月10日(第3322号)

「ルー・カリブー:平日は ママと、週末はパパと」

このエントリーをはてなブックマークに追加
『Lou Caribou:Weekdays with Mom,    

      Weekends with Dad』
Marie-Sabine Roger著/Nathalie Choux画
(Little Gestalten)
 ルーはトナカイの子供だ。平日はお母さんと暮らし、土日はお父さんの家で過ごす。金曜になると、ルーはスーツケースに着替えやお気に入りのオモチャをポイポイ放り込む。毎週のことだから、もうすっかり慣れているのだ。お父さんの住む街は、列車に乗って森と丘を過ぎたところにある。お父さんとは公園で自転車に乗ったり、湖でカヌーに乗ったりする。ルーは思う。「ここにひとつの暮らし、あっちに別の暮らし。二つのライフがあるって最高!」

本作はフランスで出された絵本の英訳版だが、描かれている離婚家庭の共同親権のあり方がアメリカのそれとよく似ている。アメリカではよほどの事情がない限り、離婚後の子供の親権は双方が持つ。子供はどちらか一方の親と暮らし、他方の親は週末や夏休みなどに会う権利を得ることとなる。

ルーは両親のどちらも大好きで、両親もルーを愛している。両親は平日と週末の取り決めをきっちりと守っており、まだ幼いルーはこのライフスタイルを当然のことと受け止めている。絵が素晴らしいこともあり、ルーと同じ生活を送っている子供なら大いに共感を抱くのではないかと思える。ただし、本作では共同親権のすべてがパーフェクトに描かれており、どこにもアラがない。

アメリカにはルーのように離婚した両親の間を行き来している子供が多い。ただし子供が別居している親に会う頻度は、双方の距離などによって変わる。例えば、ルーの父親はそれほど遠くない街に住んでいるためルーは毎週末に会っているが、ニューヨークとカリフォルニアなら毎週は到底無理だ。そこまで離れていなくとも、遠ければ遠いほど旅費がかかり、親の経済負担となる。また、子供が移動できるのは週末だけだが、週末に働く職種の親にはかなり難しい事態となる。さらに本作では幼いルーが一人で列車に乗って父親の家に向かうが、アメリカでは法により、大人が送迎しなければならない。これも距離が離れているほど時間がかかるわけだが、親にも週末に不可避の用事はできる。すると離婚相手に何らかの妥協策、時には面会キャンセルを通告することとなり、双方に大きなストレスがかかる。子も毎週末を丸々よその街で過ごすとなると、友だちの誕生会など地元の行事に一切参加できない、週末の習い事もキャンセルなどの不便を被る。それでも親とのつながりを維持することには大きな意味があり、そもそも子には親に会う絶対的な権利があると解釈しての共同親権だ。

今、日本では単独親権から共同親権に移行する動きがあり、それに対し、家庭内暴力を振るう親にも親権を与えることになるとする反対論がある。子の健全な成長を促し、かつ離婚後の親も親としての義務を果たし、かつ子供と喜びを分かち合える最善策とは。日米ともに模索は続く。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
このエントリーをはてなブックマークに追加
堂本 かおる 氏の関連記事
American Picture Book Reviewのその他の記事
American Picture Book Reviewをもっと見る >
文学 > 外国文学 > アメリカ文学関連記事
アメリカ文学の関連記事をもっと見る >