山本貴光、松永伸司、久保昭博、武田将明(司会) 「現代フィクションの可能性」 テーマ:情報化の進む現代において、フィクションの役割はいかに変化しているのか(東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年1月17日 / 新聞掲載日:2020年1月17日(第3322号)

山本貴光、松永伸司、久保昭博、武田将明(司会)
「現代フィクションの可能性」
テーマ:情報化の進む現代において、フィクションの役割はいかに変化しているのか(東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1)

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二〇一九年十一月一日、「現代フィクションの可能性」と題し、東京大学・駒場キャンパスで、山本貴光氏(文筆家・ゲーム作家)、松永伸司氏(首都大学東京非常勤講師、ゲーム研究・美学)、久保昭博氏(関西学院大学教授、文学理論・仏文学)、武田将明氏(東京大学准教授、英文学)による公開シンポジウムが開催された。このシンポジウムは、武田氏らによる「世界文学の時代におけるフィクションの役割に関する総合的研究」という科研費の基盤研究が主催するもので、二〇一六年に開始したこの研究プロジェクトが最終年度を迎えるにあたり、リアリティの変化に対応したフィクションの概念や理論を議論する試みの集大成的な企画として構想された。シンポジウムでは「情報化の進む現代においてフィクションの役割はいかに変化しているのか、さらにそうした変化を踏まえつつ現代フィクションの持つ可能性あるいは危険な点はどこにあるのか」という主題を巡って、山本氏、松永氏、久保氏の三者がそれぞれのテーマで発表を行ない、後半では司会の武田氏と登壇者らによる討議と会場との質疑応答が行なわれた。その模様をレポートする。(編集部)
第1回
■第一部▽発表1:「フィクションと人間の接触面(インターフェイス)の間で何が起こるのか」山本貴光氏

山本 貴光氏
山本氏は、フィクションについて実装と機能の二つの面から検討した。実装とは、フィクションがどのような要素から構成されるかを、機能とは、そうしたフィクションが人にもたらす効果を指す。例えば、文章によるフィクションの場合、夏目漱石が『文学論』で行った文学の定義が参考になる。これについて、著書『文学問題(F+f)+』(幻戯書房、二〇一七年十一月)での検討をもとに次のように整理された。まず実装の点では、文学は「F+f」という二つの要素から成る。ここでFとは認識(意識の焦点が当たっている観念もしくは印象)を、fとは情緒(認識に伴って生じる情緒)を意味する。つまり文学作品は、人の認識と情緒という二大要素から構成されるという見立てである。また、機能の面では、そうした文学作品に触れた結果、読者(reader)にも「Fr(読者の認識)+fr(読者の情緒)」が生じる。小説を読む人は、目から文字を入れる。それらの文字は認識と情緒を表している。その結果、読者の心中に認識や情緒が催されて変化が生じる。これが文芸、文章によるフィクションと人間の間で生じる出来事である。山本氏はこれを「文学とは、読む人の感情をハッキングする行為である」と要約した。
文学問題(F+f)+ (山本 貴光)幻戯書房
文学問題(F+f)+
山本 貴光
幻戯書房
  • オンライン書店で買う
さらに、ゲームを例としてコンピュータによるフィクションについても検討された。ゲームではプレイヤーの行動選択によって結果が分岐する。この特徴を「if X then A else B」というプログラムにおける条件分岐の構造として整理できる。現在ではそうした選択肢をアルゴリズムで自動生成する手法も用いられており、そこでは一生プレイしても見尽くせないほどの選択肢が実現されている。フィクションの自動生成がさまざまに試されつつあるところだ。

また、インターネット上には膨大なコンテンツが蓄積・提供されており、さながら膨張を続けるフィクションの銀河系といった様相を呈している。私たちはかつてないフィクションとの関係を経験しつつあることが指摘された。
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この記事の中でご紹介した本
文学問題(F+f)+ /幻戯書房
文学問題(F+f)+
著 者:山本 貴光
出版社:幻戯書房
「文学問題(F+f)+ 」は以下からご購入できます
なぜフィクションか?  ごっこ遊びからバーチャルリアリティーまで/慶應義塾大学出版会
なぜフィクションか? ごっこ遊びからバーチャルリアリティーまで
著 者:ジャン=マリー・シェフェール
翻訳者:久保 昭博
出版社:慶應義塾大学出版会
「なぜフィクションか? ごっこ遊びからバーチャルリアリティーまで」は以下からご購入できます
ビデオゲームの美学/慶應義塾大学出版会
ビデオゲームの美学
著 者:松永 伸司
出版社:慶應義塾大学出版会
「ビデオゲームの美学」は以下からご購入できます
「ビデオゲームの美学」出版社のホームページはこちら
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