ネオサピエンス 回避型人類の登場 書評|岡田 尊司(文藝春秋 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年1月18日 / 新聞掲載日:2020年1月17日(第3323号)

ネオサピエンス 回避型人類の登場 書評
宙吊りの未来図
―ディストピアとして描き出す―

ネオサピエンス 回避型人類の登場
著 者:岡田 尊司
出版社:文藝春秋
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 精神医療や心理療法に関心を持っていた私は、二〇〇四年から、岡田尊司の著作を書店で見つける度に、購入して読んで来た。気がつけばそれらの本は、五〇冊程になっている。

私は、二〇一二年三月に精神保健福祉士の資格を取り、その翌月から精神科クリニックでの仕事を始めて継続し、二〇一九年一〇月には公認心理師の資格を取得した。それなりの現場経験や勉強を積み重ねた上で読んでも、岡田の作品は相変わらず興味深いし、常に新鮮な情報や発見を齎してくれる。

「愛着障害」に関する岡田の本は何冊も刊行されているのだが、本書『ネオサピエンス』がそうであるように「回避性」のそれを中心に書かれたものとしては、『回避性愛着障害』や『生きるのが面倒くさい人』がある。いずれも、その障害について詳述した上で、それを突破する道を探究している。回避性のものに限らずに、愛着障害全般を乗り越えることを主題に据えた書物としては、『生きるための哲学』や『愛着障害の克服』が挙げられる。岡田は、常にポジティヴだった。

だが、本書『ネオサピエンス』は、あえてそれらへの「アンチテーゼ」として、書き記されているのだ。「私の中の願望や希望的観測ではなく、むしろ正反対な、われわれの価値観や信念をすべて否定するような思考実験」として岡田は、「人類」において「回避型」が主流となった未来図を、オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』のようなディストピアとして、描き出した。

読みながら、精神科病院は、多くの患者にとっては「地獄」だが、少数の患者にとっては「天国」だといった消息を思い起こしたり、例えば演劇集団が、哺乳類の猿山的なものから昆虫の蟻塚的なものになりつつあるといった現状を思い合わせたり、本書の一部の描写は、未来どころか現在の現実そのものではないかと思い当たったりし、脳内がクラクラとする。宙吊りになったかのような感覚が、目覚めてしまう。

著者が、回避型の代表的な人物の一人としてエリック・ホッファーを挙げていることを思い出して本書の「人類」をイメージし直すと、さらに眩暈が起こるのであった。

実は、岡田は諸作において、ちらほらと、自らも回避型のパーソナリティの持ち主であったことを「告白」している。文学部哲学科を中退後に、医学部に入り直したという経歴を持つらしい。その頃のことについて書く岡田の文章は、実に味わい深いものである。

SFのような宙吊りの未来図を描いた本書の後に、一冊でいいから、自らの「モラトリアム」を私小説のように振り返った作品を書いてもらいたいというのが、長年の読者からの希望である。
この記事の中でご紹介した本
ネオサピエンス 回避型人類の登場/文藝春秋
ネオサピエンス 回避型人類の登場
著 者:岡田 尊司
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「ネオサピエンス 回避型人類の登場」出版社のホームページはこちら
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