写真報道50年の軌跡 書評|藤田 観龍(本の泉社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年1月18日 / 新聞掲載日:2020年1月17日(第3323号)

写真報道50年の軌跡 書評
あの時、私たちは同じ現場にいた
ある報道写真カメラマンの記録から

写真報道50年の軌跡
著 者:藤田 観龍
出版社:本の泉社
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 何度も私たちは現場ですれ違っていたのではないか。報道写真を半世紀にわたり撮り続けてこられた藤田観龍氏の写真集が上梓された。ページをめくるうちに、その時々の出来事の記憶がまざまざと甦ってきた。私は、テレビ報道の現場ばかりで仕事を続けてきて、今年(二〇二〇年)で四四年目になった。だから出来事の経験がかなりの部分で重なっている。報道の言葉で言えば、それらは大事件、大事故、大災害、大きな世相の変化といったことがらだ。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事件、阪神淡路大震災、東日本大震災、福島第一原発の炉心溶融事故、安保法制・共謀罪・モリカケ疑惑に怒った国民の大規模反対運動、熊本地震、西日本豪雨、沖縄の米軍基地反対運動…。書き出したら一九六〇年代以降の戦後史年表が出来上がってしまう。

確実に同じ現場にいたケースを書き出してみると、翁長雄志さんが沖縄県知事に当選が決まってカチャーシーを踊りだしたあの瞬間。そして翁長さんの急死後の選挙で玉城デニーさんが沖縄県知事に当選が決まって同じくカチャーシーを踊りだしたあの瞬間。元海兵隊員によるうるま市の女性強姦殺人死体遺棄事件に抗議した県民大会の重い時間。安保法制に反対したシールズたちの国会前抗議行動の熱い時間。阪神淡路大震災で壊滅的な被害を受けた住宅で茫然と探しものをしていた人々の時間。福島県の放射線汚染区域で無人と化した町並みの止まってしまった時間。私たちはその場で同じ報道対象に向きあっていたはずだ。そうか、ここでも一緒だったのかと意外に思ったのは、一九八八年八月に日比谷の野音で、忌野清志郎らRCサクセションがコンサートをやった場にも藤田氏がいたことをこの写真集で知ったことだ。「原発は危ねえ」と歌った歌詞が発売元の親会社・東芝の怒りを買い、CD発売が直前になって中止になり、清志郎は本気で怒っていた。

報道カメラマンも人間だから、取材をしながらいろいろな感情に苛まれる。その一端が写真のキャプションに表れていた。阪神淡路大震災の際に、大火に見舞われた神戸市長田区で撮影中に〈「お前は何をしているのだ」とカメラを手にしている筆者に詰め寄る人もいた〉と藤田氏は記している。一方で、御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機の機内から生存者として救出された川上慶子さんがヘリで吊り上げられたシーンを撮影中に、自衛隊員に励まされた〈慶子さんは下向きで目を閉じていたが、隊員の声でパッチリと眼を開いた時に撮影でき感動した事を思い出す〉とあった。また、ロッキード事件で田中角栄元首相が東京地検に出頭した際に、カメラマンは自分を含め十人足らずだったこともキャプションに記されていた。ただ敢えて記すが、一九六九年のいわゆる新宿騒乱事件の写真での〈一部暴力学生〉云々の記載には違和感を抱いたことを記しておく。写真のキャプションには党派性も宿る。

イサム・ノグチやユージン・スミスの若かりし頃の写真に惹かれた。
この記事の中でご紹介した本
写真報道50年の軌跡/本の泉社
写真報道50年の軌跡
著 者:藤田 観龍
出版社:本の泉社
以下のオンライン書店でご購入できます
「写真報道50年の軌跡」出版社のホームページはこちら
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