読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫 書評|金治 直美(佼成出版社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年1月25日 / 新聞掲載日:2020年1月24日(第3324号)

読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫 書評
文字によってひらかれる世界
いかに点字と出会い、図書館を創るに至ったのか

読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫
著 者:金治 直美
出版社:佼成出版社
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 本書は、東京にある日本点字図書館を創立した本間一夫氏が五歳で視力を失った後、いかに点字と出会い、図書館を創るに至ったか、その生涯を追う一冊である。小学校中学年以上を対象にしたノンフィクションシリーズのひとつで、テーマではなく人物を軸に、セリフを用いたストーリー仕立てとルビの振られた平易な言い回しで、子どもたちも共感しながら読むことができる。巻頭のカラーページでは日本点字図書館の仕事が紹介され、ところどころにはさまるコラム「あなたも点字が読めるようになる」では点字の原理について図解を用いた分かりやすい説明もされていたりと、随所に新鮮な情報が盛り込まれ、大人にも読みごたえのある良書である。

日本点字図書館は、今から八〇年前、一九四〇年に本間一夫氏によって日本ではじめて設立された本格的な点字図書館である。今では点字図書のみならず、録音図書も制作し、利用者に向けて郵送で貸し出したり、希望者への個人朗読を行ったり、点字教室を開催するなど、さまざまなサービスを提供しているという。私は点字図書館の存在を知ってはいたが、そのように幅広いサービスを行っていること、またすでに八〇年前にこのような施設が創られていたことはまったく知らなかった。

多くの人にとって、日常生活で点字に触れるチャンスは限られている。とはいえ気をつけて見れば駅の券売機や郵便ポスト、信号のボタンなどには点字が表示されている。そのためか、点字というものに対し、「必要な情報をサインなどに代わって伝える手段」という印象を持っていた。

しかし、自分の身を振り返ってみても、文字というのは「ここに何がある」とか「これに注意せよ」とか、必要最低限の情報を伝えるだけの手段ではない。詩や物語などの文学しかり、新しい言葉と出会うことのできる辞書しかり、文字によってひらかれる世界は無限大だ。

もし、そういった文字の世界への扉が閉ざされていたら……。私の世界は、どれだけ小さく狭いものになってしまっただろうか。考えただけで息苦しくなってしまう。小さな頃から本を読んでもらうのが大好きだった、向学心豊かな一夫青年が、まだ点字図書へのアクセスが限られていた時代に抱いたであろう知への渇望は想像にあまりある。そうした「読む喜び」「知る喜び」を、自分だけが満たすのではなく、すべての人に与えることを「自分にしかできない仕事」と思い定めた本田氏は、太平洋戦争、そして戦後の混乱期を乗り越えて日本点字図書館を発展させた。

この功績がもたらした、視覚に障がいを持つ数多の人々の時を超えた「読み、知る喜び」に想いを馳せながら、私もまた自分の知らなかった世界について読み、知る喜びを味わわせてもらった。本間一夫氏が生涯をかけて追求した、「文字」を通して新しい世界や人々と出会い、つながる体験を、別のかたちで追体験させてもらった読書であった。
この記事の中でご紹介した本
読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫/佼成出版社
読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫
著 者:金治 直美
出版社:佼成出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
「読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫」出版社のホームページはこちら
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