「コミックス」のメディア史 モノとしての戦後マンガとその行方 書評|山森 宙史(青弓社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年1月25日 / 新聞掲載日:2020年1月24日(第3324号)

「コミックス」のメディア史 モノとしての戦後マンガとその行方 書評
マンガの当たり前を解体する
マンガの当たり前を解体する

「コミックス」のメディア史 モノとしての戦後マンガとその行方
著 者:山森 宙史
出版社:青弓社
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 マンガに関わる経験が変化している。マンガは日常的な娯楽として受容されている媒体である。大人から子供まで多少の差はあれども、マンガを全く読んだことがないという人はいないだろう。マンガが好きな人であれば、作品の物語やテーマについて友人・知人と熱い議論を交わすこともあるだろうし、好きなキャラクターについて語り合うこともあるだろう。

だが、マンガは日常的〝すぎる〟メディアであるがゆえに、現状や歴史はあまり意識されていないとも感じる。たとえば、マンガ雑誌が売れなくなり、コミックス(単行本)でまとめて読む読者が増えたといわれたのはいつ頃からであろうか。近年では、そもそも紙の媒体ではなく、電子書籍や専用アプリ、あるいはSNSにおいてマンガを読むということも珍しくないが、そのような状況はどのように考えたらよいのだろうか。そもそも、マンガとはいかなる存在であるのだろうか。

その意味では、本書は我々がマンガについて自明視している事柄を解体する著作である(ちなみに、上記の疑問にも答えてくれている)。表紙に書かれているように、著者は「生産・流通・消費の視点からコミックスの『モノとしての認識枠組み』が成立し変容する歴史的なプロセスを解き明か」している。

分析ではコミックスの出版物としての定義がどのように作られ変容していったのかを検証した上で、「書籍」扱いコミックスについての記述を通じて、コミックスの「生産」領域が検討されている。さらに、「流通」領域におけるコミックスの位置づけを明らかにするため、書店における「コミックコーナー」の成立過程を記述する。そして、「読者」に焦点を当てて、コミックスの受容経験の様相を描き出す。

本書の終章において著者は以下のように主張する。すなわち、①コミックスは「雑誌」と「書籍」という2つの出版メディアをめぐる「失敗」を通じて固有の出版ジャンルとして認識されるメディアであったこと。②コミックスは「読み物」と「商品」両方の顔を有しながらもそのどちらでもない「モノ」であったということ。③受け手にとってもコミックスは「出版物」であると同時に「モノ」としての「マンガ」を実感させる存在であったこと。これらの特徴から、コミックスとは「出版メディアとしての定義を再現なく留保されることで出版メディアたりえる」という「ねじれた」メディア観を有した出版物であることが示される。著者は、従来のメディア論的なマンガに関する言説が持つ、「固有の出版メディア」という捉え方の「限界」と、戦後マンガ史における「マンガ雑誌」を中心的に置くメディア観の再検討の必要性を主張している。

本書は、マンガ研究、メディア研究を専門とする読者のみならず、広く一般の読者にもマンガという我々にとって日常的なメディアについて再考する、すなわち「マンガの当たり前を解体する」きっかけを提供してくれている。
この記事の中でご紹介した本
「コミックス」のメディア史 モノとしての戦後マンガとその行方/青弓社
「コミックス」のメディア史 モノとしての戦後マンガとその行方
著 者:山森 宙史
出版社:青弓社
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