原発県民投票は民主主義をいかにヴァージョンアップさせるか——いばらき原発県民投票の会共同代表・徳田太郎氏インタビュー(聞き手=佐藤嘉幸)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年1月24日 / 新聞掲載日:2020年1月24日(第3324号)

原発県民投票は民主主義をいかにヴァージョンアップさせるか——いばらき原発県民投票の会共同代表・徳田太郎氏インタビュー(聞き手=佐藤嘉幸)

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二〇一一年に起きた福島第一原発事故後、国内では原発稼働ゼロの時期が続いたが、二〇一五年の九州電力川内原発の再稼働を皮切りにして、現在六基が稼働中である。そんな中、原発を再稼働するかどうかを県民投票で直接問おうという動きが出ている。「いばらき原発県民投票の会(HP)」共同代表・徳田太郎氏にお話を伺った(聞き手=佐藤嘉幸・筑波大学准教授)。(編集部)
第1回
いばらき原発県民投票運動の沿革と現状

佐藤  
「いばらき原発県民投票の会」は、首都圏唯一の原発である東海第二原発(茨城県東海村)の再稼動の是非について、県民投票を提起する運動体です。東海第二原発は東京から一一〇キロに位置し、周辺三〇キロ圏内の人口は、県庁所在地である水戸市を含む約九四万人で、全国の原発中最多です。東海第二原発は一九七八年に運転を開始し、二〇一一年に地震、津波で被災して以後は運転を停止しています。しかし、運転開始から四〇年後の二〇一八年、原子力規制委員会は二〇年の運転延長を認可しました。一般的には原子炉の寿命は四〇年とされていますが、それを二〇年も上回る二〇三八年までの運転延長が予定され、しかも被災原発が再稼働される。この点の是非をめぐる県民投票の実施が運動の焦点になっています。東海第二原発は首都圏唯一の原発であり、その再稼動は首都圏全体にも影響する大きな問題です。まず、運動の沿革についてお聞かせください。
徳田  
まず全国的な動きですが、やはり東日本大震災および福島第一原発事故が大きな転機でした。二〇一一年六月、原発稼働の是非に関する国民投票の実現を目指す市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」が発足しました。その流れを受けて翌年、大都市である東京都、大阪市で、また原発立地県である静岡県、新潟県で、原発再稼働をめぐる住民投票を求める直接請求が行われました。二〇一九年には、宮城県でも同趣旨の直接請求が行われました(いずれも議会が否決)。

住民投票自体が、原発をめぐる問題と密接にリンクしてきたという側面もあります。一九八二年七月、高知県窪川町(現四万十町)で、日本初の住民投票条例が制定されましたが、これは原発設置の賛否を問うものでした(最終的には、住民投票を実施することなく原発設置を断念)。一九九六年八月には、新潟県巻町(現新潟市)で、条例に基づく初の住民投票が行われましたが、これも原発設置の是非を問うものでした(投票結果を受けて原発設置は撤回)。

茨城県でも二〇一一年以降、原発再稼動をめぐる住民投票の動きがありましたが、それが本格化するのは二〇一八年四月です。静岡県での直接請求の関係者を招いて学習会を行い、参加者を中心に「原発県民投票を考える会」が発足しました。同年には原子力規制委員会による再稼働認可があり、二〇一九年二月には日本原電が再稼働の意思を表明する。そうした動きを前に県民投票の必要性が高まり、三月に「考える会」を発展的に解消して「いばらき原発県民投票の会」が発足した。以上が経緯になります。
佐藤  
この運動は単体で始まったのではなく、原発国民投票の運動や、他県で行われた原発県民投票の運動が背景としてあったということですね。また茨城県の運動は、これらの運動体と様々な形で交流がありますね。
徳田  
アドバイスをいただいたり、お互いのイベントに参加する形で交流を深めています。
佐藤  
いばらき原発県投票の会は、どのような理念に基づいて活動しているのでしょうか。
徳田  
理念が最もよく表われているのが、「話そう 選ぼう いばらきの未来」という会のキャッチフレーズです。最終的な目標は、直接請求によって、東海第二原発の再稼働に関する県民投票が実施されること、そしてその時に、県民一人ひとりが自分自身の意思を表明できるようにすることです。再稼働には周辺六市村と茨城県の同意が必要ですが、民意に支えられた形でその是非を意思決定するためには県民投票が必要である、というのが私たちの主張です。
県民投票が実施されると、有権者全員が参加できることになりますから、多数の民意が包摂、反映されます。また、推進/反対を問わず、多様な立場から出される情報に基づいて、県民一人ひとりが考え、話し合う。そうした熟慮と討議を重ねた上で賛否の判断を行い、個々の選択を表明することができる。その結果、練られた民意が得られると考えています。
県民投票以外の方法もあるのではないか、という意見もあります。例えば住民アンケートです。しかしアンケートは、無作為抽出された一部の県民に限られ、かつ各人が記入して返送するだけですから、多様な情報の中で民意を練り上げていく過程がない。また、知事や議会に任せるべきであるという意見もあります。けれども、知事や多くの議員は、選挙の際、再稼働に対する賛否を明らかにしていません。仮に表明していたとしても、選挙は「政策のパッケージ」で争われるため、有権者が東海第二原発の再稼働に関して判断を委ねたとまでは言えません。
県民投票は「東海第二原発の再稼働」という一点に絞って、県民一人ひとりが考えて一票を投じる。そして、その結果が知事の意思表示に反映されて、初めて「県」としての同意/不同意になる。私たちはそう考えて、県民投票の実現を目指しているのです。
私たちの運動は県民投票の実施自体がゴールですから、反原発/脱原発の運動体でも、原発推進の運動体でもありません。あくまでも県民が意思を表明する機会を設けることに焦点を当てています。だから、再稼働に賛成/反対、あるいは関心の高い/低いにかかわらず、誰もが関わることができるものにしていきたい。また様々な活動をしている団体ともゆるやかに繋がっていく。それによって直接投票という民主主義の共通体験が得られる。私たちの運動が、そのプラットフォームになれればいい。そのように考えて活動しています。
佐藤  
重要なポイントとして、この運動が純粋な草の根の市民運動から出発している、という点があります。同時に、そのことに由来する難しさもあると思います。
徳田  
党派的な運動であれば組織的基盤がありますから、多くの方が一気に動くことができます。私たちはまったくそれがないところから出発していますから、運動が広がるには時間がかかります。また、著名人が中心の運動でもありませんので、メディアで大きく報道されることもありません。その点は苦労してきました。ただ、特定の団体とだけがっちり手を組むこともないからこそ、すべての政党、多くの団体に協力のお願いができる。そこは強みでもあります。
佐藤  
次に、運動の現状についてお伺いできますか。
徳田  
私たちの運動は、「話そう 選ぼう いばらきの未来」というキャッチフレーズに現れているように、単純に投票することだけが目標ではありません。そこに至る、みんなが考え、話し合う過程を重視しています。具体的には「県民投票カフェ」を積極的に開催しています。これは、東海第二原発の再稼働について、あるいは県民投票自体についてどう考えるか、お互いの意見を述べ、聞き合う場であり、二〇一八年四月からスタートしました。一一月三〇日までに、茨城県内の四四市町村のうち三六市町村で、計六五回カフェを開催し、八五〇名以上の方に参加いただいています。茨城県の全市町村での開催を目指しています。
七月には、「県民投票フェス」という形で、県内の鉄道主要九駅でシール投票を行いました。「再稼働の可否の判断に、どう県民の意思を反映するか?」をテーマにして、知事や議会に任せるか、県民投票を実施するかの二択で投票してもらい、計一三七九名に参加いただきました。こちらも単にシールを貼るだけではなく、言葉を交わすきっかけになって欲しいという意味も込めて開催しています。
佐藤  
フェスは一二月一日にも行われましたね。
徳田  
三回目となる一二月のフェスは、オンラインで行い、朝の九時から夜の九時まで、十一番組を生放送し、参加者と双方向的に対話しました。県民投票カフェはリアルな場ですが、そこに来られない方も大勢いますし、オンラインならば県外、国外にいる方たちにも参加いただける。一日だけで千名以上の方が参加されました。ユーチューブで動画が公開されています(https://www.youtube.com/channel/UCU0bbyag_M9aTl94saZ1XUw)。
佐藤  
私も「対話を可能にするために——原子力話法/脱原発話法を超えて」という番組で、茨城大学の渋谷敦司先生、徳田さんとお話しさせていただきました。
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