スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか 書評|小笠原 みどり(毎日新聞出版 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年2月1日 / 新聞掲載日:2020年1月31日(第3325号)

スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか 書評
監視の実態に迫る
人間の尊厳と人権、自由と民主主義の価値を大切にするために

スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか
著 者:小笠原 みどり
出版社:毎日新聞出版
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 「日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか」という副題を付した本書は、著者も記しているように、「2017~18年に公開されたスノーデン日本関連文書を詳細に分析した初めての本である」(「あとがき」)。

アメリカの情報・諜報機関である国家安全保障局(NSA)の元契約職員だったエドワード・スノーデンは、2013年、NSAが世界中の通信を大量無差別に盗聴し、監視していることを内部文書により暴露し、世界に衝撃を与えた。監視研究を専門とする社会学者であり、ジャーナリストでもある著者は、2016年、日本とNSAとの関りという観点から、日本人として初めてスノーデンにインタビューし、NSAは大量無差別監視を日本でも実行している旨の証言を『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』(毎日新聞出版)として刊行していた。

前回のインタビュー証言の裏付けとなり、根拠となるNSAの内部文書を丁寧に読み込み、他の関連資料とも照合することによって、日本でNSAが何をしてきたのか、日本はそれにどう対応してきたのかをより具体的に描こうと試みたのが今回の本だ。それでは、著者が分析した2017~18年公開のNSA日本関連文書には例えば何が記されているのか。

1996年の日米合意により沖縄県読谷村にある楚辺通信所の返還が決まったものの、実際には米海兵隊キャンプ・ハンセンへの移設が約束され、そこにインターネット監視用の情報収集システムの導入も含む最新設備を建設し、しかもその費用(5億ドル=約600億円)は日本政府が負担させられることになった(第二章)。

NSA日本代表部がある米空軍横田基地には2004年、盗聴用のアンテナの生産と修理のための工学支援施設を建設し、建設や人件費も含むその費用も日本が支払うことになった。ドローンとともにこうしたアンテナなどの諜報機器を配備して米軍は世界中さまざまな作戦行動を展開してきた。また、米空軍三沢基地では通信衛星の傍受を展開し、そこではハッキング攻撃さえ含まれている(以上、第三章)。

NSAは2013年4月以前に、自らが構築運用してきたエックスキースコアをはじめとする違法監視プログラムを日本の防衛省に提供した。エックスキースコアというのは、フェイスブックなどネット上の情報やメール等の私信、非公表の個人情報などを網羅し、検索できる装置である(第五章)。さらに、内閣情報調査室が主導し、NSAの協力のもと、2013年から防衛省情報本部・太刀洗通信所で外国衛星傍受によるインターネット大量監視を展開することになった(終章)。

この本を少しでも読めば、NSAが世界規模で通信やネットを含むあらゆる電子情報を盗聴し監視している場は日本も例外ではないだけでなく、基地を提供し、思いやり予算などと称する膨大な資金を負担し、さらには太刀洗通信所での米との共同盗聴さえ進める日本は、著者も強調するように、NSAの加担者であり、共犯そのものと言わざるを得まい。しかも、こうした大量監視の手法は、市民のプライバシーや人権を侵害し、違法性を帯びる可能性が高いにもかかわらず、本書が暴いたように、そうした事実を公にしないで秘密裡に進められてきたことは確かだし、重大である。

このほか、秘密保護法等の一連の立法を監視法制として位置づけるべきとの提起も重要だ。つまり、違法な大量無差別監視を合法的にするために秘密保護法の制定を米国(NSA)は強力に後押しし、日本政府も米国への監視協力や自らの監視活動のためにこれを推進した。また、盗聴範囲を拡大し、通信会社の立ち合いを不要とした盗聴法改正は違法だった監視の手段を大幅に合法化するものだった。さらに共謀罪法は盗聴捜査を前提とし、監視の合法的な手段である盗聴をさらに押し広げる効果をもった、というのである。傾聴に値し、吟味すべき提起だ。

日本関連のスノーデン・ファイルと格闘することを通して、著者は現代の監視の実態に迫り、豊富な材料を読者に突き付けている。人間の尊厳と人権、自由と民主主義などの価値を大切にしていくうえで、現代の監視をどう克服していくべきか、本書から多くのヒントや手掛かりが学べるはずだ。
この記事の中でご紹介した本
スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか/毎日新聞出版
スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか
著 者:小笠原 みどり
出版社:毎日新聞出版
「スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか」は以下からご購入できます
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