リクルートスーツの社会史 書評|田中 里尚(青土社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年2月1日 / 新聞掲載日:2020年1月31日(第3325号)

リクルートスーツの社会史 書評
リクルートスーツが貴方の個性を駄目にする
黒のリクルートスーツに映る日本の経済

リクルートスーツの社会史
著 者:田中 里尚
出版社:青土社
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 リクルートスーツと聞いて、どんなスタイルを思い浮かべるだろうか。おそらく大半の方が、黒の画一的なスタイルを思い浮かべたのではないか。画一的なリクルートスーツのきっかけとなったのは、今から数十年前、一九九〇年後のバブル崩壊の時である。

では、それ以前のリクルートスーツはどうだったのか。一九七〇年代には、リクルートスーツという概念そのものが存在しなかった。あったのは「リクルートファッション」という自由度の高いスタイルである。女性たちの個性溢れる自己表現が存在していた背景には、男性の様にスーツの標準が無かったこと、そして職場での女性の立場が、その時代のリクルートファッションのスタイルを確立していたことが挙げられる。女性らしさの表現と、業種に応じた服装で、合格を勝ち取ろうとする女性たちの葛藤と競争があったのである。では男性はどうか。勿論、男性も背広という標準がある中で、今より自由度が高い服装をしていたのだ。

「服装での自己表現?服装で落とされたらどうするの?そんな冒険は、必要ない。無難なリクルートスーツを着用して、自身の想いや、考えを伝えるのが就職活動では無いか」と思う人も多いかもしれない。しかし、私は声を大にして言いたい。就活生の皆さん!一度リクルートスーツを脱いでみては?と。

本書を読み、思い出したことがある。私は、リクルートスーツに袖を通した事がない。就活の志望先がアパレルデザイナーだったからだ。当時から、画一的なリクルートスーツに対して、非常に違和感を覚えていた。だからと言って、リクルートスーツを完全に否定するわけではない。黒のリクルートスーツは万能でもある。しかし、同じ黒でも個性を引き出せる術はあるはずだ。

今のリクルートスーツを脱ぐには勇気がいるという人もいるだろう。まずはこの本を開いてほしい。リクルートスーツがどのような変遷をたどり、社会に組み込まれていったのか。その歴史を知る事で、これから就活をされる方にとって、リクルートスーツを見つめなおす良いきっかけとなる一冊となっている。

服装とは、「個人の個性と魅力を引き出すツール」そして、「相手に敬意を表す為のツール」である。この敬意を表す事こそ、一番大切な根本となる。相手に失礼でないスタイル、会社の雰囲気に合わせたスタイルにするなど、個性と言ってもただ好きな服装を着れば良いと言う事ではない。しっかり考えた上で、服装は成り立つものなのである。所詮、人は見た目で9割が決まってしまう。面接で話す内容も言わばリクルートスーツと同じ。インターネットで見つけた画一的な問答集ではないか。その中で目を惹く人は、やはり自分なりの個性をプラスして話している人だと思う。ファッションも同じことだ。「たかがリクルートファッション、されどリクルートファッション」なのだ。

リクルートスーツが画一的になり、その長い間に凝り固められた「採用側のマインド、就活生の服装に対する意識、そして、リクルートスーツを製造、販売する側の提案」全てを変えていくことができれば、真の魅力を表現できる場になる事だろう。男女共に、どんな時も唯一無二の魅力を大切にして欲しい。魅力溢れる就活生が街中に溢れることを願って。新たなるリクルートスーツのあり方とは何か。改めて考えさせられる一冊となった。
この記事の中でご紹介した本
リクルートスーツの社会史/青土社
リクルートスーツの社会史
著 者:田中 里尚
出版社:青土社
「リクルートスーツの社会史」は以下からご購入できます
「リクルートスーツの社会史」出版社のホームページはこちら
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