森ヒロコ絵、中川素子文 宙からきた子どもたち|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年2月8日 / 新聞掲載日:2020年2月7日(第3326号)

森ヒロコ絵、中川素子文
宙からきた子どもたち

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 くもりのない理知の目がこちらを見つめ返す――印象的な表紙の子どもには、透明な羽が生えていて、いのちの卵のような何かをぎゅっと大事に抱え持っている。

ページを開けば、宇宙のただなかの細い細い道を、両腕を横に広げて渡っていく子どもたち。中川氏はこの絵に「住みたい星をさがしながら、宙の子たちは、つばさをはずして歩くれんしゅう」と想像を広げる。

本書は表紙と扉絵を含め、十八枚の絵からなる。二〇一七年に逝去した森氏の銅版画を愛し、深い理解を寄せる中川氏により、独立した一枚一枚の絵が構成され、物語となった。「それらの絵は、美しい神秘感を醸し出しつつ、一種の怖さをも秘め、見る人を物語の世界に引き込んでいく」と中川氏は書く。本書には北海道新聞に掲載された森氏の言葉も「私が選んだ銅版画は、一度刻んだ線を消すことは容易ではなく、緊張を強いられ、不器用なくせに、ある面、完璧主義の私には、苦しいことが多い」と引用される。銅板と対峙し、一つ一つ刻み込んでいくその緊張感が、森が「硬質で精緻な世界」と呼ぶ、あたたかく同時につめたく、かたくまたやわらかく、不自由で自由な、神秘的な奥行きを持つ世界を生み出しているのだろう。

「あの子たち、地球に行くのかしら?」「だめよ! だめ、だめ! 地球はだめよ!」

「子どもたちが、世界を見きわめようとする心を信じよう!」

中川氏が絵に共鳴し生まれてきた言葉は、特に大人の胸を打つだろう。「にぎやかな星」「悲しい星」「戦いだけでなく、優しさもある」「動物も植物もあふれていた。おいしい空気がある珍しい星」「ぼくらの星」。そんな地球が、森氏の絵のように、子どもたちがのびのびと宇宙を描き、青い月の光の下に野の花が美しく生茂り、きらきらした樹氷の光を浴びて、宙の子たちが自転車で疾走できる、そんな星であり続けるように。胸元に翼を折りたたんだ宙の子どもが笑顔でいられるように。そんな願いがわいてくる絵本です。
この記事の中でご紹介した本
宙からきた子どもたち/柏艪舎
宙からきた子どもたち
著 者:中川 素子
イラストレーター:森 ヒロコ
出版社:柏艪舎
「宙からきた子どもたち」は以下からご購入できます
「宙からきた子どもたち」出版社のホームページはこちら
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