シリーズ貧困=事例から学ぶ、地方都市の女性と子どもの貧困 坂爪真吾*雨宮処凛トークイベント載録 「見えない貧困」 「最前線」で「最善戦」する女たち 『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』(集英社新書)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 特集
更新日:2020年2月7日 / 新聞掲載日:2020年2月7日(第3319号)

シリーズ貧困=事例から学ぶ、地方都市の女性と子どもの貧困 坂爪真吾*雨宮処凛トークイベント載録
「見えない貧困」 「最前線」で「最善戦」する女たち
『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』(集英社新書)

このエントリーをはてなブックマークに追加
「性風俗で働くシングルマザー」と聞いて、あなたはどんな女性をイメージするだろうか? 

このたび刊行された『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』(集英社新書)は、地方都市の性風俗で働くシングルマザーの実像を現場で取材し、その背景と課題、解決策を探るものである。そこで見えてきたのは地方都市の社会課題と、その「最前線」で「最善戦」する女性たちの姿だった――。

一月十日、東京・下北沢の本屋B&Bで、著者の坂爪真吾氏(一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)と作家・活動家の雨宮処凛氏によるトークイベントが開催された。イベントでは坂爪氏が「風テラス」の活動を通して知り合った本書に登場するシングルマザーの事例とそこから見えてくる社会課題や解決策が話し合われた。「シリーズ貧困」の本特集ではトークの載録と坂爪氏へのメールインタビューでお伝えする。   (編集部)


第1回
新潟「風テラス」の活動から

坂爪 真吾氏
坂爪  
 私は、性風俗の世界で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」を、弁護士とソーシャルワーカーと連携して東京で四年ほど前に立ち上げ、三年前の二〇一七年に地元である新潟市でも開始しました。その三年間の活動がこの本のベースになっています。最近、人口の減少に伴って地方都市のいろんな問題がクローズアップされるようになってきて、そういった中で貧困、社会保障、ジェンダーなどを絡めて、特に女性と子どもの貧困を性風俗の現場の視点からまとめたのが今回の本です。

本ではS市としていますが、舞台となっているのは私が活動している新潟市(人口約八〇万人の政令指定都市・県庁所在地)と周辺の町々で、新潟市内にはデリヘル風俗店が一〇〇店舗近くあり、県内の風俗店で働く女性約七六〇〇人のうち、およそ半数の三八〇〇人弱の女性が働いています。そういった中で「風テラス」では、月に一回相談員がチームでデリヘルの事務所や待機部屋にお邪魔して相談・支援活動を行なったり、託児所で託児のお手伝いをしたりしています。今日はそこで出会ったシングルマザーの方々の事例を中心にお話します。

    *

■Aさん(二六歳):母親もシングルマザー。高校中退後、地元の町を出て新潟市のキャバクラで働く。二〇歳の時に妊娠。相手はキャバクラのボーイで経済力がなかったため、未婚で里帰り出産し生後六カ月からパートなどで働き始めるが稼げず、再び新潟市のデリヘルへ。知り合いの男性と風俗で働いていることを隠したまま結婚するが、直後に夫に性病をうつしてしまい退店。子育て支援の充実している隣町に引っ越す。夫の収入だけでは足りず、ソフトサービスのお店で働き始め、通信制高校で高卒資格を取得。デリヘルの仕事を再開。夫とは不妊治療をめぐり離婚(養育費なし)。再び新潟市に引っ越し、デリヘル専業で月収四〇万円程度。

    *
坂爪  
 このAさんの事例は新潟のデリヘルでは割と典型的な事例の一つです。この中にいろいろな社会課題が詰まっていると思うのですが、雨宮さんの視点から見てここに社会課題があるのではないかと感じた部分はありますか?
雨宮  
 ある意味典型的なシングルマザーの話ですが、私は実家があればある程度安定していたのではないかと勝手に思い込んでいたんです。というのも、私は東京でしか活動や取材をしていないのですが、東京で会う人は地方都市で食べられない、あるいは親との関係が悪くて逃げてきたみたいな人が多くて、中には地元にいれば実家はそれなりに太いみたいな人もいるので地元にいれば安定だと思ったら、地方自治体の疲弊が進んでいてシングルマザーの家庭からシングルマザーが生まれる、そういう流れが確実にあることに一つ気づきました。
坂爪  
 実家というのは一つの大きなキーワードで、新潟の性風俗店で出会う女性はシングルマザーの方も独身の方もほぼ異口同音に実家を出たいと言うんです。親とそりが合わないとか、中にはおそらく虐待的なことがあったり、あるいは東京に出たいと憧れている人もいます。
雨宮  
 東京に出たいというのも一つのトラップなんですけどね。
坂爪  
  東京に出れば当然親の支えがなくなるし、家賃も生活費も全部自分で稼がなければいけなくなる。実家にいるのも大変だし、実家を出て東京に行くのもどっちも辛い。
雨宮  
 実家に頼れない問題というのは女性の貧困に密着に関わっています。二〇一〇年に大阪で一歳と三歳の子供を置き去りにして餓死させた下村早苗の事件がありました。彼女の場合はシングルファザー家庭で育ち、父親はラグビーの有名な指導者で躾と称して厳しく育てられ、病気のときでも父親は助けてくれなかったそうです。彼女は離婚して子どもを二人抱えて最初は名古屋のキャバクラで働き、大阪の風俗店に移ってからあの事件を起こしてしまった。でも、二三歳の就労経験がほとんどない女性が養育費も貰わずに誰の手も借りずに一歳と三歳の子どもを働きながら育てていけるわけがない。子どもか自分がインフルエンザになったとき、父親も元夫も助けてくれなかったことからどんどん生活が荒んでいくのが象徴的だと思いました。シングルマザー一人に子どもの命がかかっているというのは、すごく危うい丸投げだと思います。
坂爪  
 実家以外の社会資源がないというのは怖い話で、頼れるのが実家と風俗しかないという極端な話になってしまいます。
雨宮  
 下村早苗の場合は父親に頼るか風俗かみたいな話で、結局すべて男性社会の地獄という感じがします。
2 3 4 5 6 7
この記事の中でご紹介した本
性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困 /集英社
性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困
著 者:坂爪 真吾
出版社:集英社
「性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困 」は以下からご購入できます
「性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困 」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
雨宮 処凜 氏の関連記事
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
社会・政治 > 社会全般関連記事
社会全般の関連記事をもっと見る >