芥川龍之介 家族のことば / 7793(春陽堂書店)人間・芥川龍之介」を識ってほしい|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

著者から読者へ
更新日:2020年2月8日 / 新聞掲載日:2020年2月7日(第3326号)

人間・芥川龍之介」を識ってほしい

芥川龍之介 家族のことば
著 者:木口 直子
出版社:春陽堂書店
このエントリーをはてなブックマークに追加
 「芥川龍之介について、研究者目線ではない、一般の方の視点に立った本を出したいと思っています」

昨年の4月末、春陽堂書店の方よりいただいたそのお申し出は、私にとって、まさに青天の霹靂でした。しかし、なぜだかすぐに、本に関するはっきりとしたビジョンを描くことができたのです。

「龍之介死後、妻である文をはじめ、後に活躍した長男・比呂志、三男・也寸志など、遺された家族たちは、夫として、父としての龍之介について、折に触れて語り継いできました。その思い出の数々を、龍之介の生涯と照らし合わせることで、作家としてではなく、人としての龍之介が見えてくるような気がします」

そのようにお答えしたのを覚えています。

2015年、私が研究員を務める田端文士村記念館がリニューアルオープンした際に「芥川龍之介 田端の家 復元模型」(30分の1スケール)を制作監修したことがきっかけで、自然と芥川龍之介研究に携わる機会が多くなりました。さらに没後90年を迎えた2017年、「河童忌」(かつて芥川龍之介の忌日に開催されていた偲ぶ会)を当館のイベントとして復活させるという企画を立てたことを経て、彼の周辺の人々が、早すぎる彼の死といかに向き合ってきたかということにも興味を抱くようになっていました。そしてその研究が、龍之介の人としての本質を捉える手がかりになるのではないか、とも常々感じていたのです。

数年前より、「文豪」という言葉の定義に変化が見られ、芥川龍之介ほか、夏目漱石、森鷗外など多くの文学者たち=文豪が、漫画やゲームの世界に登場する「キャラクター」として浸透し、〝文豪ブーム〟と言われる現象が続いています。とくに若年層においては、作品を読むことで作家の愛好者になるのではなく、人物のファンであるから作品を読む、というように、文学に対するアプローチ方法も異なってきているのかもしれません。

だからこそ、書斎に座り、眼光鋭く、まっすぐにこちらを見つめる「作家・芥川龍之介」ではなく、よく悩み、よく笑い、よくしゃべる「人間・芥川龍之介」を識ってほしいと思うようになりました。そしてそれを一番に語ることができるのが家族であり、第三者の私ができることは、家族の記憶の断片を、時系列に沿ってまとめ直す作業でした。家族の「ことば」を、本人の「ことば」とリンクさせることで、より立体的に龍之介像を浮かび上がらせたい、そして天才としてではなく、どこか自分と近い存在として、改めて遺された作品に触れてほしい、そのような願いを込めて、『芥川龍之介 家族のことば』を編み上げました。

最後に装幀に込められた、デザイナーのこだわりについて、ご紹介します。本の色みは全体的に白ですが、紙質でカバー・帯・表紙に変化をもたせるデザインとなっています。カバーと本文中には、「言の葉」を連想させるリーフを散りばめ、さらに文字の色も黒ではなくセピア色の写真をイメージし、視覚的にも読みやすいよう、配慮しました。

この本を手に取り、まずはその美しさに触れてみてください。装幀の美しさは、芥川龍之介の家族の優しさでもあるのです。

★企画展「子規が打ち、龍之介が泳ぐ 田端の大運動会」

2月8日(土)~5月6日(水・祝)、田端文士村記念館(東京都北区田端6-1-2)、入場無料、10時~17時、休館=月曜(祝日の場合は火・水曜)、祝日の翌日(土・日曜の場合は翌火曜)

正岡子規からはじまる文士と野球との関係、水泳に夢中になった芥川龍之介など、写真や作品に遺された、文士たちのスポーツに励む姿を展示。

《講演会=野球の歴史と田端文士たち~正岡子規、押川春浪、サトウハチローほか》講師=井上裕太、3月22日(日)14時開演、定員100名 【申込方法】往復はがき、締切:3/2(月)必着(往信用裏面:①3月講演会②住所③氏名・ふりがな④電話番号⑤年齢/返信用表面:応募者の住所・氏名)
この記事の中でご紹介した本
芥川龍之介 家族のことば/春陽堂書店
芥川龍之介 家族のことば
著 者:木口 直子
出版社:春陽堂書店
「芥川龍之介 家族のことば」は以下からご購入できます
「芥川龍之介 家族のことば」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
著者から読者へのその他の記事
著者から読者へをもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究 > 作家研究関連記事
作家研究の関連記事をもっと見る >