「ウィ・ザ・キッズ :合衆国憲法前文」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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American Picture Book Review
更新日:2020年2月10日 / 新聞掲載日:2020年2月7日(第3326号)

「ウィ・ザ・キッズ :合衆国憲法前文」

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 米国は今、史上3度目の大統領弾劾裁判と、11月の大統領選に向けた予備選が同時進行する異例の事態となっている。この2件を語る際に米国憲法が引き合いに出されることもままある。

本作『We The Kids』は子供に米国憲法の前文を教える絵本だ。米国憲法には米国の理念を表す短い前文があり、「We the people(われら合衆国の人民は)」から始まる。本作のタイトルはこれを「僕たち私たち合衆国の子供は」に置き換えたものだ。

最初のページには「われら合衆国の人民は」とだけ書かれ、郊外の住宅の前で3人の子供が地図とにらめっこし、その脇でペットの犬が大荷物を背負っている絵が描かれている。ページをめくると「より完全な連邦を形成し」とある。子供たちと犬が一緒になって大奮闘し、荷物を丘の上に運び上げている。

「正義を樹立し」のページでは、子供の一人がレクチャーをしている。木の板に「ルール:(1)公平(2)分かち合う(3)他の子の髪を引っ張らない」と書かれており、犬は直立不動で敬礼しながら聞き入っている。「国内の平穏を保障し」では子供たちが荷ほどきをし、犬はのんびり座り込んで持参したテレビを観ている。その犬が「共同体の防衛に備え」ではヘルメットを被り、積み上げた土嚢の上で見張り役を務める。すでに陽も落ち、子供たちは組み立てたテントの中で楽しく過ごしている。ちなみにテントに侵入しないよう、犬が見張っている相手はリスやウサギだ。「一般の福祉を増進し」では、ランプが暖かい灯をともしているテントの中で、犬がおどけて子供たちを笑わせている。

「我らと我らの子孫に自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって」のページを見ると、テントが実は自宅の庭にあることが分かる。子供たちも犬もすでに寝落ちており、両親が窓から見守っている。最後の「アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する」では、一家の家を含む街の全景が描かれている。

この絵本にも‟前文”がある。著者は5年生で憲法を習った際、古臭くて分かりにくい英語に辟易したとある。「だけど」と著者は読者である子供たちに語りかける。昔はこれが普通の英語だったんだろう、それより憲法はみんなが「ハッピーで、安全で、心地よく」暮らすためのハウツー本なんだと言う。そんなの今では当たり前のことだけど、昔はそうじゃなかったし、エラい人に逆らうと牢屋に入れられることもあったと説く。

アメリカの自由が義務、責任、自発的な努力によって維持されていること、そこには軍隊の存在まで含まれていることが、実は3人の子供ではなく、犬の行動によって示された物語なのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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