柴田武『日本の方言』(岩波書店) わかりよい一般書――生活とコトバの将来に関連させる 評者:国分一太郎 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月12日号|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年2月2日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第224号)

柴田武『日本の方言』(岩波書店)
わかりよい一般書――生活とコトバの将来に関連させる
評者:国分一太郎 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月12日号

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自分でも岩波新書を一冊書いた人間として、この本を読み、じつに苦心を重ねた書き方だな、と感心した。ありあまるほど持っているだろう学問的資料を、ほどよくえらんで、わかりよい一般書にしていることがひとつ、方言研究といえば、好事家的・末しょう的になりがちなのを、生活と日本のコトバの将来にキチンと関連させて、研究家にも素人にも、発展的な考え方をさせようとしている点がもうひとつ、これらがこの本の特長である。

Ⅰの「方言とは」の章では、その土地土地の「はえぬきの人がくつろいだ場面でよく使う言語」を方言、「はえぬきでない人がよそゆきの場面で使う言語」を共通語とし、それゆえ東京をはじめ、どの土地にも、それぞれ「A町方言」と「A町共通語」があるといっているのがおもしろい。これは東京コトバを全国共通語といい、A町方言と全国共通語だけがあるとした今までの考え方よりも一歩進んだ考え方である。ついで第Ⅰ章では方言の分布について述べながら、方言には単語・文法・アクセントなどの面で体系があることを示し、等語線によって、日本方言の種別や境界などの研究が深まることを、具体的な例をあげながらおもしろく説明している。

Ⅱ章では、生活と方言、方言コンプレックスについてふれ、先の「A町方言」と「A町共通語」の考え方に立って、A町共通語・B村共通語……を、方言のよいものを加えながら、東京共通語に接近させ、拡大していけば、方言劣等感もなくなり、全国「標準語」も次第につくられていくと示唆しているかに見える。このときアクセントの訂正のしごとは一番しまいにまわせというのも妥当な注意である。ⅣⅤ章の共通語化のプロセス・方言の将来のところでは、コトバについて意識する個人にも標準語教育に熱意をもつ教師にも考えすぎと行きすぎを反省させ、しかも明るい見通しと勇気を与えてくれる。国語教育に関していえば「書きコトバ」教育の重要性を説かぬ弱さ以外は、私としてすべて賛成であり、今日すこぶる有益な本だと思った。(こくぶん・いちたろう=日本作文の会委員、教育評論家)

柴田武『日本の方言』(新書判・一九一頁・一〇〇円・岩波書店)
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