創刊から62年、正確な伝記を目指す 「人物叢書」(吉川弘文館) 300冊達成を記念して|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年2月14日 / 新聞掲載日:2020年2月14日(第3327号)

創刊から62年、正確な伝記を目指す
「人物叢書」(吉川弘文館) 300冊達成を記念して

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徳川家康(藤井 讓治)吉川弘文館
徳川家康
藤井 讓治
吉川弘文館
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吉川弘文館から刊行されている「人物叢書」。その創刊は一九五八年九月、『明智光秀』(高柳光寿著)から始まり、二〇二〇年一月に刊行された『徳川家康』(藤井讓治著)で三〇〇冊となる。この達成を機に編者である日本歴史学会の会長で東京大学名誉教授の藤田覚氏に本叢書のこれまでの歩み、魅力などを伺った。また歴史小説家の澤田瞳子氏には「人物叢書」三〇〇冊達成を記念してエッセイを寄せてもらった。            (編集部)
第1回
正確な史伝・辞書的な利便性を特徴に

藤田 覚氏
――「人物叢書」の第一冊目の『明智光秀』が刊行された一九五八年から、三〇〇冊達成までに六十二年という歳月を要しています。創刊以来、日本歴史学会が責任編集をされていますがこの経緯から教えてください。
藤田 
 日本歴史学会の刊行物は「人物叢書」の他に月刊の学術雑誌『日本歴史』があります。『日本歴史』の創刊は一九四六年六月で日本歴史社から刊行されました。現在の吉川弘文館から発行されるようになったのは一九五五年です。その三年後に、日本歴史学会の当時の会長であった高柳光寿氏が「人物叢書」の第一冊目として『明智光秀』を書きました。

「人物叢書」は「史実にもとづく正確な伝記の一大叢書」ということで企画されています。執筆依頼をする時も、第一に「良質の史料にもとづく、正確な伝記であることにつとめられ、永い生命を持つものにしてください」、第二に「伝記としてこの一冊があれば、その人物のことは一通り知ることができるものにしてください」とお願いしています。

――執筆者の選定や取り上げる人物の選定はどのように進めるのですか。
藤田 
 日本歴史学会の理事会で決定します。創刊当初から「三〇〇冊を目指す」という目標を定め開始したので、依頼した執筆者が書けなかった場合はその後任を探しますし、現在でも新たな執筆依頼を続けています。また「人物叢書」に加えるべき人物の検討も積極的に行い、最もその人物にふさわしい研究者に執筆をお願いできるよう検討しながら進めています。

――創刊当初から三〇〇人の人物が既に決まっていたのですか。
藤田 
 「人物叢書」創刊間もない頃に出た内容見本には二一二人の人物が予告されていましたので企画の段階でおおよそが決まっていたのでしょうね。

――創刊一〇〇冊目達成時の一九六二年に菊池寛賞を受賞されています。創刊から約四年で一〇〇冊達成を考えると三〇〇冊達成までの刊行期間の開きがありますが、ご事情があったのでしょうか。
藤田 
 一〇〇冊目は高柳氏の次の会長、坂本太郎氏の『菅原道真』ですが、約四年ということは年平均二十五冊です。二〇〇冊目の『円珍』(佐伯有清著)は一九九〇年で一〇〇冊までに約二十八年。『徳川家康』が二〇二〇年で約三十年かかっています。確かに遅くなっていますから、「人物叢書」を企画立案した先生方は「どうしてこんなに時間がかかるんだ」と嘆かれているかもしれない。でも私からすると、どうして四年で一〇〇冊も刊行できたのか、恐るべき早さの理由を聞きたい(笑)。

でも刊行ペースが落ちているのはやむを得ないと思います。一つには書籍出版を取り巻く環境の変化もありますし、書き手についても、ある時期から人物よりも時代の政治や社会や経済、文化の方の研究に興味や関心がうつった気がします。やはり人物を詳細に辿る作業はやっかいで大変です。

私も『日本歴史』の編集委員を一九八八年から十年間務めました。二〇〇〇年から六年間は「人物叢書」の責任を持つ理事の一人にもなりました。先程言いました執筆者選定のほか、入稿した原稿の査読を誰に依頼するのかを月一回の理事会で検討します。その頃は年に一、二冊しか「人物叢書」は出ていませんでした。それで、引き受けていただいてから二十年、長い人は三十年くらい経っていた執筆者もいたと思いますが、刊行促進のために様子伺をしました。要するに催促ですね(笑)。その時に書かねばなるまいと思い直した方が何人かいましたから一、二冊ではなくなりました。近年では執筆者の協力と理事会の熱心な働きかけもあって年に四、五冊のペースになっています。それでなんとか二〇二〇年に三〇〇冊を迎えました。

――「人物叢書」が類書と決定的に違うところはどこでしょうか。
藤田 
 最初に申しました「史実に基づいた正確な伝記」という部分です。年表風に、人物が生まれてから死ぬまでの全体に触れている点です。私も他社の本で数冊人物伝を書いていますが、人物の評価を強く打ち出す評伝と「人物叢書」は違うと考えています。「人物叢書」も評価が全く入っていないわけではありませんし、執筆者の思い入れも書かれています。だけど何月何日に何をしたかが「人物叢書」を読めばわかる。正確な史伝・辞書的な利便性を特徴としています。

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この記事の中でご紹介した本
人とことば  人物叢書別冊』/吉川弘文館
人とことば 人物叢書別冊』
編 集:日本歴史学会
出版社:吉川弘文館
以下のオンライン書店でご購入できます
徳川家康/吉川弘文館
徳川家康
著 者:藤井 讓治
出版社:吉川弘文館
以下のオンライン書店でご購入できます
「徳川家康」出版社のホームページはこちら
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