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更新日:2020年2月15日 / 新聞掲載日:2020年2月14日(第3327号)

塗中録

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塗中録(浅沼 璞)左右社
塗中録
浅沼 璞
左右社
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「老い、追い、おいと俺が負わされていく。老いていく俺、追われる俺、負いきれない俺」。

老いと病を描きながら、この軽み。冒頭から畳みかけるように、言葉をまるでジャグリングするかのように空に放っては、ギュッとキャッチする。そして言葉を連ね、連ねていくことで、人間の生というものが、はらはらとたちのぼる――どこでもなくどこでもあるどこかが、ほんのひととき浮かび上がってくる。

連句は五七七、七七、五七七……と句を連ねていくが、連句ではなく俳句でも、「一句詠むごとに主体(みたいなもの)はどんどん変わっていく」。「編集主体が立ちあがってこない」ことが、著者がこれまで句集を編まなかった理由だった、という。「連句的に拡散しがちな私の主体」と、いっぽうで求心する自身を、表現を、じっとみつめる目。風景を見つめる自分を見つめる自分……そのまなざしは読者へもはねかえってくる。でも描かれた句の世界はそのような視線までまるごと包み込んで、言葉ではない世界をもたらすようにも思う(言葉なのに不思議だ)。そして、読者の世界を既に、少し変えている、かもしれない。

一句ごとではなく、見開き一頁で引用する。
弁当はさめたるがよし天高し
耳鳴りもちあきなおみも冬隣
枯葉踏む喉のかはきは靴底に
つゞまやかなる鯛焼の目元かな

小春日の坂は手のひらへとつゞく
膨らみの後は締まりて風光る
春風の塩ふるやうな嘘に嘘
こゝまでの花見つくして湖に墓

違う季節がまたやってくることを楽しみに思える。連句人が初めて出した俳句とエッセイ、手になじむ一冊。
この記事の中でご紹介した本
塗中録/左右社
塗中録
著 者:浅沼 璞
出版社:左右社
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