わたしを空腹にしないほうがいい 書評|くどう れいん(BOOKNERD)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2020年2月15日 / 新聞掲載日:2020年2月14日(第3327号)

くどうれいん著『わたしを空腹にしないほうがいい』

わたしを空腹にしないほうがいい
著 者:くどう れいん
出版社:BOOKNERD
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 食べることが好きだ。毎日何かしら食べなければいけないのなら、まずいものよりもおいしいものを食べたい。母が作ってくれる手作りの肉じゃが、某チェーン店が提供する味の濃い甘辛いハンバーガー、恋人と食べる多摩川の野草や釣ってきた魚、空き時間に靖国神社で友だちと日光を浴びながら食べるお弁当、深夜にこっそり隠れて食べる罪深い味のカップラーメン。全部好きで、全部おいしい。人には誰しも、好きな食べ物とそれにまつわるエピソードがある。日々生きていく中で、「食べる」という行為は切っても切り離せないものであり、楽しいときも、嬉しいときも、悲しいときも、私たちは食べていかなければならない。私はおいしいものを「おいしい」としか表現することができない。「おいしい」以外の上手な表現を知らないから。みなさんは、おいしい食べ物を食べたときにどのような表情をして、どのような言葉をこぼすのでしょうか。

本作の著者である、くどうれいん(工藤玲音)は、1994年生まれ岩手県盛岡市出身、在住の歌人・俳人であり、2012年に岩手日報随筆賞を当時までの最年少で受賞。2018年には短歌甲子園で準優勝に輝いた。現在はPOPEYEにて『銀河鉄道通勤OL』、書肆侃侃房にて『うたうおばけ』を連載中。盛岡だけではなく、文学界の未来を担う人物であると言えるだろう、と私は思う。今回、紹介する『わたしを空腹にしないほうがいい』では、食にまつわるエッセイと俳句がセットとなり掲載されている。

比喩に飽きここにゆらせばゆれるゼリー


著者は、中学校の給食に出るゼリーが好きで、特に、七夕のときに出される星形の牛乳寒天とパイナップルが入っているゼリーがお気に入りだった。大人になった今、中学生のときに憧れていた大きな七夕ゼリーを作るが、気持ちは満たされない。著者が本当に食べたかったのは、たくさんのゼリーではなく、小さな浅い容器に入っているほんの少しのゼリーで、「昼休みも合唱の練習するの嫌だなあ」と思いを馳せながら食べたかったと記している。実は、私も似たような体験をした。私の場合はゼリーではなくプリンだ。給食に出てくるプリンをおなかいっぱい食べたかった。大学生になり、欲を満たすためバケツプリンに挑戦したが、著者と同じ理由で気持ちを満たすことはできなかった。

かんかんのきみの背後の雲の峰


ゼリーの可愛らしい話とは打って変わって、怒りに任せて鶏胸肉をフォークで刺すエピソード。鶏胸肉をこんがりと丸焼きにして豪快に食べる姿はまるで王様のようだ。「雲の峰」は夏の季語で入道雲のことである。この句では、激しい上昇気流により巨大化した入道雲のように、むくむくと大きく怒りたっている様子を表現している。

泣いたり笑ったり怒ったり、ころころと変化する著者の俳句と表情を思い浮かべると人間味を感じ、自分に重ね合わせてしまう。食事は、「誰」とするのかも重要であり、家族、友だち、恋人などと過ごす時間の中にたくさんの思い出が溢れている。未来を予想することはできないが、この先、私たちが食事をしていくことはきっと変わらない。食べるのが好きな人も、そうではない人も、著者の何気ない日常を切り取った文章に共感と幸せ、おいしさを感じることは間違いないだろう。
この記事の中でご紹介した本
わたしを空腹にしないほうがいい/BOOKNERD
わたしを空腹にしないほうがいい
著 者:くどう れいん
出版社:BOOKNERD
以下のオンライン書店でご購入できます
「わたしを空腹にしないほうがいい」出版社のホームページはこちら
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