渡辺一夫『乱世の日記』(講談社) 仏14世紀末の縮図 評者:佐藤輝夫 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月19日号|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年2月9日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第225号)

渡辺一夫『乱世の日記』(講談社)
仏14世紀末の縮図
評者:佐藤輝夫 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月19日号

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一三三八年から一四五三年までがふつう百年戦争の戦われた時代だとなっている。ちょうどわが足利中期の時代にあたる。この戦いは、フランスの国土の上に所領地を持つイギリス王が、その領土の所有ということからフランスの主権を要求し、ドーバー海峡を渡って、いくたびも来寇し、そのつど、フランスの国土を侵食していったものである。フランス国内でも、このイギリス軍に荷担する、主として民衆の力を結集した党派と、飽くまでフランスを護ろうとする、貴族を主体とする国粋派との二つに分裂していたので、言わば外寇と内乱との二重的な性格をおび、したがってそれだけ、陰惨な戦争であった。結果から見れば、これでもって封建制度が崩れて君主政治がその曙光をみせ、民衆の力が増大して、その君主政治の基底をなす国民国家をつくりあげる地均らしをしたことになるのであるが、それだけにフランスとしては、苦悶を嘗めた時代であった。

一三三八年から一四五三年という長い戦争のあいだにあっても、一四一五年から約三十年のあいだが、それこそ末期的様相を呈して、その混乱の極に達した時代である。この乱世のあいだにあって、自分の周囲にみるその時代の混乱を、生活の苦しさを、破壊を、つぶさに誌しとめた『日記』がのこされている。この貴重な文献は、かなり尨大なものであるが、その要所要所を適宜に抜き出して、これに必要な説明を加え、今日の読者の理解に徹せしめようとしたのが、この『乱世の日記』である。これはわが『方丈記』のような、いわゆる文学では勿論ない。日々起った変動を、生活の困難を、あるがままに誌したもので、それだけリアルに当時の有様が読者の眼前に迫ってくる。ジャンヌ・ダルクの時代、フランソア・ヴィヨンの時代は、この『日記』を通じて、そのありのままの姿を見せている。(さとう・てるお=早稲田大学教授・フランス文学専攻)

渡辺一夫『乱世の日記』(B6判・二〇六頁・二六〇円・講談社)

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