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更新日:2020年2月21日 / 新聞掲載日:2020年2月21日(第3328号)

磯野真穂*古田徹也「生きることの不安を問い直す」トークイベント載録(代官山 蔦屋書店)
ほんとうの言葉/それぞれの踏み跡
『急に具合が悪くなる』/『ダイエット幻想』/『出逢いのあわい』

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第2回
「ほんとう」を描くとはどういうことか

古田 徹也氏

磯野 
 では、私の方から『急に具合が悪くなる』と『ダイエット幻想』の二冊についてお話しします。『急に具合が悪くなる』については何度も話しているのですが、実はこの本については話すのが難しいんです。

その理由の一つは、この本はそれまでずっと二人で支え合いながら書いてきたにもかかわらず、宮野さんが救急搬送されてからは、片方が突然いなくなってしまう状態で走らなければならなかったことがあります。そして何よりも、本は出版されましたが、宮野さんはもう語れない。だからこそ、イベントやnoteでは、すでに語れなくなってしまった宮野さんが何を語ろうとしていたのかを話そうとしてきました。

ですが、今日は少し趣向を変えて――それは、もしかしたらみなさんが期待していた話ではないかもしれないのですが――『急に具合が悪くなる』の宮野さんでない方の書き手の話を少しさせていただこうかと思っています。

私は学部では運動生理学をやっていたのですが、人間を数値化して捉える自然科学の手法に違和感を感じ、言い換えると、これでは人間の「ほんとう」は捉えられないという感じがして、その違和感から文化人類学に専攻を変えました。
言葉の魂の哲学(古田 徹也)
言葉の魂の哲学
古田 徹也
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とはいえ、専攻を変えたからと言ってそこに「ほんとう」を見たわけでもなく、人間が生きることの「ほんとう」を描くとはどういうことだろうかとずっと模索してきたわけです。一つ間違いなく言えることは、『急に具合が悪くなる』で私たちが交わした言葉には、「ほんとう」があると確信を持って言えるということ。古田さんがサントリー学芸賞を受賞された『言葉の魂の哲学』(講談社選書メチエ)で語られている言葉を借りれば、魂が宿った言葉のやりとりができた。

実は今日ある学部生の方から、大学教員とのやり取りの中で「人間の底を見てしまった気がする」というメールをもらいました。アカデミアの世界というのは表面上は綺麗な言葉が踊りますが、実際にそこで行われていることはそれとは正反対ということが残念ながらあり、その学生はそこにふれてしまったようです。

私もその学生と似たような経験をアカデミアの中ですることがあり、その度にここに「ほんとう」はあるのだろうかと悩むことがありました。その意味でこのタイミングで宮野さんと「ほんとう」を感じられるやりとりができたのは、私の人生にとって大きな意味があったのです。
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