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更新日:2020年2月21日 / 新聞掲載日:2020年2月21日(第3328号)

角川俳句賞・短歌賞贈呈式

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左二人目から鍋島氏、田中氏、西村氏、抜井氏

一月二十七日、第六十五回角川俳句賞、角川短歌賞の贈呈式が東京・丸の内の東京會舘で行われた。俳句賞は「玉虫」西村麒麟、「鷲に朝日」抜井諒一、短歌賞は「季の風」田中道孝、「螺旋階段」鍋島恵子と、両賞ともに二名が受賞した。

俳句賞は、選考委員を代表して小澤實氏が選考経過を述べた。「受賞の二作品は、全く違う世界を持っています。抜井作品は季語の空気感をうまくとらえた作品であるし、西村作品は俳諧味のある作品です。これは別々に評価してもいいのではないかということになりました。

「玉虫」では〈後列の頑張つてゐる燕の子〉。「頑張つてゐる」などという単語を俳句で自然に用い可憐な燕の子が描かれています。〈インバネス死後も時々浅草へ〉。荷風の面影がありますね。一句全体が浅草論になっている、奥行のある句です。

「鷲に朝日」では〈遠蛙ときをりすぐそこの蛙〉。蛙を通して晩春の田園の大きな空間を捉えています。〈蜜柑より小さき両手で剝いてをり〉。二度目の「蜜柑」が省略されている気持ちよさ。描写がすっきりとして魅力的です。お二人に、若いリーダーとして界を活性化していていただきたいと思います」

短歌賞は、選考委員を代表し小池光氏が選考経過を報告した。「お二人は歌の作り方が正反対で、田中さんは現実から言葉が出てきて、それを歌の形にしていくけれど、鍋島さんは言葉を組み上げていく中で、心と現実が立ち現れてくるように思います。

「季の風」は候補作の中で一篇だけ異質でした。「職」の現場から歌を紡ぎ出す、昔は辛く厳しい労働詠が基本トーンでしたが、田中さんの歌は爽やかな風が吹いているようで新鮮です。高層ビルの建設現場が職場。〈風を踏み風につかまりふわふわと丸太足場の風の上歩む〉。高所作業の危険な瞬間。掴まるところがない、そのときに風を掴む、風に体を預ける。経験がなければ想像では詠えない歌で、印象に残りました。

一方「螺旋階段」は、「生と死」「存在と時間」といった抽象的な思考が、歌に形象化されている。硬質な抒情が通った作品に魅力を感じました。〈心臓は鉱物に置きかわるべし雪の夜ふかく呼吸するとき〉。人間の体を柔らかいものと我々は思っているけれど、この作者は雪が降る中、自分の心臓を鉱物にかわるべしと。その捉え直しの面白さ。お二人とも研鑽をつみ、さらによい歌を作っていただきたいと思います」と話した。
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